Road going sport racers


(ストリート・リーガル!ポルシェ917K)

 前稿のヤマハOX99・・・

ox99.jpg ox9911.jpg

 に続いて、サーキットからストリートに這い出した(笑)レーシングカーについて少々。

 その大昔、競技車とスポーツカーの垣根が低く曖昧だった頃。
 例えば'73年迄世界スポーツカー選手権の一戦として開催されていた公道レース(!)タルガ・フローリオでは車高を上げた純レーシングカーが民家の庭先を土煙を上げて駆け抜けて行くのが見られました。
 タルガ末期のトップコンテンダーは既に先鋭化したバリバリの、ということは快適性への配慮が(あまりw)ないレースカーそのもの、でしたが'60年代半ば迄はスポーツ(ストリート)カーっぽい車、例えば・・・

アルファのティーポ33(これはストラダーレ、ですが・・・w)

t33.jpg 

(available!)

とか・・・

250lm.jpg 

フェラーリのLM

とか、ちょっと下のクラスでは・・・

ポルシェ904

904.png 

(この車はなんとモンテにも・・・!)

 等はバリバリのレーシングカーながら構造的にも雰囲気的にもストリートカー、GT的な使い方ができるよう配慮されている部分があります。実際には相当ハード、だったでしょうが(笑)
 上記3車にはそういう使い方を想定した内装(本革?)内張りが施された個体が複数ありました。しかし空力が大切なルマンカーでさえビジネスライクなオープンコクピットとなった・・・

CGBN

(シグマ!)
 ’70年代にはそういったレーシングカーを「ストリート仕様」に改装する例はなくなりました。

 ところが’75年だったか突如、その時計の針を戻す動きがあったのです。
 ポルシェが自ら、退役して間もないルマンの王者917Kをストリート・リーガルに仕立てたのです。トップ画像がそれです。
s917.jpg 
(さすがに車高は高いですね)
 でも、ポルシェに行けば誰でも買える・・・訳では当然なく(笑)オーダーしたのはMartini&Rossiのロッシ伯(!)
まるてぃに  まるてぃーに 
 その殺風景な内装には豪華な革が張り込まれ、コクピット背後の水平冷却ファンには部外者の安全のため特製メッシュが張られたそうです。
 しかし、そのロッシ伯の力とポルシェ本家の技術力をもってしても公道用の正式なナンバー取得は難しく、アメリカ(ネヴァダ州だったか)でようやく可能になったとか。
 917、その耐久性はルマンで証明済み(笑)ではその快適性はどんなものだったのでしょうか?
 スペースフレームでしかもマルチシリンダーだから意外にジェントル?
 一度体験してみたいものです。

 この稿続きます。

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  1. 2016/10/02(日) 20:01:58|
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Outcast?:Yamaha OX99


(あえて高位置に置いたエアロ兼用バンパーでストリートカーらしさを!
さすが由良さん!)

 ヤマハつながり、で行きましょう。

 

 マグネシウムの色・その2稿、自分のマグネシウム鋳造屋入社面接場面に出てくる6(×2=12)気筒のシリンダーヘッドカバーは・・・

ヤマハのF1エンジン
ox99e.jpg

(カバーFギアやWポンプも我社製品・・・)

 のものでした。そしてこのエンジンのスライドスロットルの部品がこれです。

yox88.jpg

 これはOリングを挿んで輝くエアファンネルが着く仕様( ↑ )ですが、吸気管長を極限まで詰めたかったのでしょう(?)仕様違いで、この部品の吸気口立ち上がり部分にアールを与えベルマウス形状にしているものもありました。

 ox88.jpg
(F1と言えど流石に長く、625mmもあります)

 そしてこのエンジンと、延長して「タンデム2シーター」としたカーボンモノコックを用いて文字通り

公道用F1

として仕立てられたのが、その名をエンジンと分け合う・・・

ox99.jpg

ヤマハOX99-11


 です。一部ではその超高価格設定(!)と相まってただのアドバルーン的な Show car と思われているようですが、ヤマハは本気でこの車を売るつもりでした。これを起爆剤として(スポーツカー専門の?)自動車メーカーとなる気だったのかもしれません。

 現在でもまだその気なのかも(最近もそんな動きがありましたねw)

 その「本気」の証左とは・・・
 このエンジンの部品のうち、重要な部分を結構な点数製作していた我社でしたが、このストリートカー開発を機にドンと受注が増えたのだそうです。そう、これは自分の入社前の話。主に社長から伺った話をまとめてます。

 ところがその、ざっと倍になった受注に対し職人の手が間に合いません。というのも(その仕事だけではないせいもありますがw)一つの木型に対して一人の職人が「抜ける」砂型の数はある一定数に限られる、からなのです。その作業形態を続けても足りないのなら残業するか
(冬場すなわちシーズン前は既に残業続き!)木型の数を増やすしかありません(=2人でやる)。しかし木型は非常に高価なもの(一式百万単位!)です。普通はやりません。
 しかしヤマハは違ったのです。
 (型を抜くのに時間がかかる)大掛かりな木型を追加で、ストリートカー用に新規に興したのです。ストリートカー用と言っても実際にバリバリの現役レースエンジンです。当然アップデイト(設変=小変更)も結構頻繁で、木型屋さんで加工中に鋳造が止まるのを嫌った、という面も大きかったようですが。

愛読書によれば・・・
似たような構造を持つスーパーカー
f50.jpg 
Ferrari F50
 は、エンジンとシャシーの間にラバー類を一切挿まない、剛結
(=F1由来、の車体構成)のおかげで・・・

 すばらしいまでに「正しく速く」走った。(原文まま)

 そうな。ただしそれゆえエンジンの振動騒音が乗員に伝わってしまい、いわゆる「音振」も相当酷いことになっているとか(笑)例えば
「どうせ聞えないから・・・」
と、はなからオーディオ類の用意がない(!)とかその荒々しさでもフェラーリらしくない、のだそうな。

 ということはシャシー、足回りはもちろんエンジンもほぼレーシングマシンそのものであるOX99も恐らくF50同様・・・

 走りはともかく(笑)洗練性を欠く

 スーパーカーだったことはほぼ間違いないことでしょう。そしてそれが市販化が頓挫した理由のひとつだったことも。
 

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  1. 2016/09/25(日) 15:09:05|
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Miss cast?:Yamaha YZR-M1クランク・ケース

gsvraf.jpg  rc211v.jpg 
(スズキ ↑ とホンダ ↗ のインジェクション部分・・・)

 クランクケースの話が続きます。

 ヤマハの依頼で250ccでしょう、2気筒のクランクケースを作ったことがあります。

 本社直属の、といわばワークス・マシンではありましたが純ワークスたるYZRは存在しなかったのでサテライトというかセミ・ワークス格のTZM(=改造TZ?)だったのでしょう、材質もアルミでした。
 またこの時は木型支給、すなわち既にどこかで吹いたものを
「そちらで再度(=不足分を?)吹いてくれ」
ということでもありました。
 ところがこの木型、法案が良くなかったのか(?)思いほか難物で、歩留まりが非常に悪く・・・鋳物上面に鋳造不良が出てしまうのです。

 会社では、クランクケース等込み入った機械加工を施す
(すなわち加工費が張る)鋳物には吹き終わった直後に全数、いわゆる
 レッドチェック(浸透探傷検査)
 を行っていました。費用をかけてオシャカにする訳にはいきません。加工費に比べればカラーチェック・スプレーや鋳物本体すらも安いもの(笑)その検査で鋳物上面が「真っ赤」になってしまう・‥
 いわゆる「焼け」でした。
 上がりの効きが悪かったのか複雑な形状に対し吹く方向が間違っていたのか、鋳物が冷えて凝固する際「湯を取り合って」しまうことに起因する「巣」とは異なるスポンジ状の、組織の粗い部分ができてしまうのでした。
 その部分は本来の強度が出ておらず(=脆く)もちろん機械加工部分に当たると使い物になりません。
 そして色々手は打ったのですが残念ながら手詰まり、根本的には解決できませんでした。
 最後の手段として鋳物屋としては恥ずかしいことですが、怪しい部分をリューターで掘り込んでの溶接肉盛り(→元通りの形状に切削)補修を行い納めたのでした。

 その作業は全て自分が担当しました。かなり大掛かりに「施術」しましたが、やはり取り去り切れなかった「粗」な部分はあったかもしれません。ヤマハの切削担当者氏に不愉快な思いをさせてしまったかも・・・?
 恐らくはヤマハでも
「このクランクケースには鋳造不良部分が多く出る」
ことは認識していたと思います。だからこそウチにお鉢が回ってきたのでしょう。
 そして来るべき新設計のクランクケースの出来に、そんな不安定さが付きまとうのは何としても避けねばならない、と設計陣は考えたはずです。

 時は新カテゴリー施行直前でした。
 そしてその、MotoGP用YZR-M1エンジンの開発に当たってヤマハの出した解決策は・・・
billet.jpg 
(輝く、エンドミル切削加工跡だらけ・・・)
 総加工(=削り出し)クランクケースの導入、でした。

 製品の安定性を求め、マグネシウムの使用による僅かな軽量化には目を瞑り、巨大なアルミ・ブロックから本体を機械加工オンリーで削り出すのです。
 エンドミルのひと削り(=一往復)1mm以下の削り代を積み重ね(!)肉の薄い複雑な形状の「箱」を形作るのです。加工時間は驚くべき長時間(恐らく一昼夜?)に上り、その総加工費も相当な額となるはずです。
 しかし一方製品の安定性、設変に対する機動性、剛性等々確かに多大なメリットもあり・・・

 以来ヤマハからクランクケースの鋳造依頼はありません。

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  1. 2016/09/18(日) 14:39:21|
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Casting:鋳物の話・その7

rgv.jpg 
(先代?のRGV-Γのエンジン部。ぎっしり・・・)

 鋳物の話に戻りましょう。

 国内にマグネシウム屋は数少ないこと、そしてMg.鋳物の色に個体差があることは既に書いた通り。また砂型鋳造が手作りに近いことも述べました。以上3点を考え合わせると・・・
 国内産のMg.鋳物、その色と鋳肌(←そこで使っている砂の種類、粗さを反映する)を見れば、どこの工場で作ったものかが判ってきます。実際には
「これはどこそこ社の内製・・・」
とまで具体的に指摘できるほどには成れませんでしたが(笑)
「これとそれは違う所で吹いた」

ということだけなら、その風合いで判るようになります。

 例えばトップ画像、込み入っていてディテールは非常に判り難いですがスズキの500、RGV-Γのエンジン部を見ると・・・
 一番手前の、クラッチ上のy字型のホルダー、その下のクランクケース・カバー、ほとんど見えませんがクランクケース・アッパーが我が社の製品です。
 それに対し、車体上部に顔を出している排気デバイスのカバーの風合い(≒色味)が微妙に違うのですが、お判り頂けるでしょうか?

gsvr.jpg 
(ヘッド・カバーの肌に注目!)

 このGSV-Rでも、クラッチ下カバー(とクランクケース・ロワ)はウチの鋳物でしたがヘッド・カバーは余所の製品です。
 このヘッド・カバーの肌の「金型に近い」滑らかさはひょっとして砂型ではなく「プラスター・モールド」かもしれません。そうであればできる所は限られるので
「スズキさんはあそこにも仕事出しているんだあ・・・」
ってことになります(笑)

 その、プラスター・モールドとは・・・
 プラスターすなわち「石膏」。型の素材として砂ではなく文字通り石膏を用いる鋳造法で、金型に近い非常に滑らかな鋳肌が特徴です。脆い砂型よりずっと丈夫なプラスター型は、その組み合わせ精度も金型に近く、砂型に比べて製品精度も一段上です。
 水で溶いた石膏を流し込み乾燥させ型を作ります。意外でしょうが(笑)石膏は見た目よりずっと「通気性」があり、鋳造性も高いのです。実際の作業、イメージ的には冷たいのと熱いの「鋳造を2回やる」感じで(笑)非常に手間がかかるのはご想像頂けるでしょう。石膏を壊して(!)鋳物を取り出すのも結構な手間。「木型」も耐水の、専用のものが必要になる、ということで金型に近い肌と精度が得られる半面その高コストは製品価格に反映します。

 スズキのGPエンジンに話を戻します。
 

これが、Vバンク角が広がった後期型。
xrgy.jpg 
(ヘッド・カバーがアルミになったようです)

 

 
 前述の尺度で見ると・・・
 自分の退職後もGSV-Rのパーツ、クランクケース・ロアとクラッチカバーは自分の居た工場が継続受注しているようです。(自分が担当していた)仕上げの美しさと均一性は下がった筈ですが(笑)
 Mg.ではなくアルミ鋳物の肌の話になりますが、形状が微妙に変わったクランクケース・ロワの、この黒っぽい感じは会社のショットブラスト機で使っている「亜鉛ビーズ」によるものと思われます。
 またクラッチ下、クランクケース・サイドカバーは仕上げ作業が終わった段階でサンドブラストをかけているのでしょう。クラッチ前、縦に一本通っているオイル通路(?)部分の「色ムラ」はそのせいと思われます。

 この稿、まだまだ続きます<(_ _)>


  1. 2016/09/11(日) 10:37:50|
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Casting:XRE 0=GSV-R@MotoGP


(クランク室中心直下の穴に注目・・・)

 国内にマグネシウム鋳造屋は数える程しかないことは以前書いた通り。ということは国内各メーカーが手配するマグ製ワークスパーツに「当たる」可能性も高くなるのです。

 2001年のある日、機械加工等部品製作の「手配屋」さん(←そういう人がいる)が新規製作部品の見積もりで図面が持ってきました。
 よく見ると・・・
 背の低い円筒が5つちょうどオリンピックのマークのように連なった形状の部品でした。
「これは・・・?!

時は翌年に新カテゴリーMotoGPの開幕を控えた頃。そこで走らせるマシンの情報も関連誌上を少しづつ賑わしはじめていました。そして伝え聞くホンダのニューマシンは、独創的なV5気筒(!)であることも。その図面のメーカー名等は伏せられていましたが

「これは、ホンダの5気筒に違いない!」

そう確信した自分は工場長に進言しました。

「これはホンダの新しいグランプリマシンの部品です。作れること自体が名誉だと思います。ぜひ受注すべき、です!」

『なるほど、君がそこまで言うならそうなんだろう。この鋳物は・・・特に吹き難いこともなさそうだし、出す見積もり(=金額)ちょっと頑張ってみようか!』

残念ながらそのホンダRC211V(因みにVは5の意、だそうな)の吸気系パーツ鋳造の「入札」は通らず、受注できませんでしたが・・・


 一流の会社には一流の仕事が来る



 を実感したエピソードでした。


 一方旧来というか当時現役のGP500の方では・・・

rgv.jpg

スズキのRGVガンマ


 のクランクケース・アッパーやクラッチ側カバー、排気デバイスのカバー等は我社の製品でした。そのプロトタイプの(スクエア4からV4になった)頃から受注していて・・・

 その縁で、開幕翌年から参戦を発表したスズキのMotoGPマシン

GSV-R

(この本で今稿、書く気になりました・・・)


 のエンジン部品製作にも関わることになったのです。

 GPマシンのクランクケースは整備性への配慮から、すべからく上下割りです。VΓの時はそのアッパーを吹いていました。そして今回・・・

GSV-R 形式名 XRE 0(ゼロ)

gsvr.jpg 

(非常にコンパクトなエンジン)


 ではクランクケース・ロワを手掛けることになりました。アッパーはスズキ内製もしくは他社(神戸製鋼かどこかw)で吹くはず。そう、組み合わせる部品(この場合はアッパーとロワ)双方を同じ工場に発注することは、ことレースの世界では稀なのです。
 
 工場とは言いつつ少量生産の場合全ての作業は職人の手間。手作りみたいなものです。となれば2つの仕事を同時に進めるのは無理があり、多かれ少なかれ複数の部品製作には納品タイムラグが生じます。ということは・・・


 相方が揃わず組みつけられない


 という状態が発生するという可能性が高く・・・そのリスクヘッジのため別の工場に手配するのです。スピードが命のモータースポーツの世界ならではの話ではあります。

 そのXRE0のクランクケース・ロア、その色から一目で判るようにマグネシウム製。開発を早めるためそれまでのRGVΓの車体に載るよう非常にコンパクト、幅の狭さは驚異的です。VΓのエンジンがパワーを求め掃気ポートの断面積を大きく取り、500ccとしては幅広く見えたのと対照的です。

画像左というか上(合面)側がクランク室・・・

xre0.jpg

右下がミッションです。

ひっくり返してオイルパン取り付け面側。
xre.jpg
 内側の正方形の穴2つがトップ画像の窪みと繋がっています。

 と、結構複雑な形状の鋳物ですがご理解頂けたでしょうか(笑)
 しかし、このXRE0最初のプロトタイプは「短命」でした。
 極く少数の第一ロットを納めると間もなく新しい図面が届いたのです。設変です。最初の仕様はベンチで回しただけで「使い物にならない」ことが判明したのでしょう。RACERSにもそういった記述が。

 実際にはどんな問題があったのでしょうか?

 超高回転での振動等に問題があったのか、クランクシャフト支持剛性不足だったのか、全体の剛性を上げるためでしょう、重量増には目をつぶり材質がアルミに変更されたのです。
 また、クランク室内の残留オイルとクランクウェブの干渉もあったのかもしれません。
 例の正方形の2つの穴ではオイルスカベンジング能力不足もあったのでしょう。そのためのオイルポンプ追加はナンセンスです。というわけで、クランク室とミッション系を仕切る半円筒状の壁がそっくり撤去され、そこに剛性確保のため「素通しの井桁」状のごついリブが与えられました。この改変によってクランクケース内部形状はちょっと見「換気扇フィルター」のようになりました。
 現代のエンジンではオイル回収等のフリクションロス低減は重要で、前述の新しいホンダの5気筒でも「セミ・ドライサンプ」なる新機軸(不勉強で未確認w)が導入されているそうです。

 その第2仕様は画像がなく、文面での解説となりましたが、ご理解頂けたでしょうか?

 この稿、続きます。
 
  1. 2016/08/29(月) 12:13:32|
  2. Magnesium&Race
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