2-6) 追憶のMG B

 
(sold)
 前稿でかつての愛車MGBについて触れましたが、色々思い出したことがあります。
 確か79年式だったかカラシ色の、当時悪評が最高潮に達していた
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「ブラックバンパー」
の、LHDでした。ダッシュボード下に純正クーラーは吊り下げられてはいたものの不調、取り外すと(軽くなった)前が上がってしまうので・・・外さなかったんだか、外してサスペンションを切ったんだか・・・失念(笑)
 実際当時の自動車誌上におけるブラックバンパーの風評は最悪で、
「あんなのBじゃない!」
くらいの勢い、その反動ゆえか「メッキ・コンバージョン」が一般化した頃でもありました。
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(・・・なんかチグハグな感じがしませんか?)
 しかしあれをやっても内装を見れば(オープンゆえよく見えます)一目瞭然
「大枚叩いてバレバレじゃ、かえって格好悪いじゃん・・・」
と思ったものです(苦笑)

 前後に「分銅」をくくりつけられて運動性が相当損なわれていたのは確かでしょうが、乗り比べたことはないので実際にはわからなかったですし、何よりバンパーがあろうとなかろうとピキビキした操縦性の車ではないことは乗ればすぐにわかると思います。標準では、いくらコジっても上が開いた(=弱い)ボディーがねじれるばかりで(笑)正しくゲインの出ないような車です。ひっちゃきになって飛ばすのではなく、たおやかに曲げ、美しく流す、そういう車でした。

 重いバンパーや排ガス対策といった「後付け」装置は「味付け」に関わることはあっても、その車の生まれ持った基本的性質を変えるには至らない、ということをこの車から学びました。そう、BはBだったのです。

・・・と、いくら擁護してもブラックバンパーの
「あのカッコがやだ」
という人には仕方ないですが。ただし、スタイリングに対して
「やっぱり英国風じゃなきゃ・・・」
という意見には異論があります。
 Bのスタイリングは前後オーバーハングの長さから言っても英国というより
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イタリア風 (!)
です。その点では弟分の
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ミジェット
の方がはるかに純英国風でしょう。その元々のイタリアンな素質を上手に生かしたモダナイズとしてBのブラックバンパーは、アルファのスパイダーの最終型
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(=S4)
と同じ位、成功していると思います。

 このBは山本社長が今市の
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ブガティック
在籍中に話を持ってきたもので、3名の共有だったことは前稿の通りです。日常使いの車のシェアは難しいのでしょうが、たまにしか乗らないスポーツカー(それもオープン!)なら、譲り合いの気持ちの通った友人間の共有は、維持費メリットのみを享受でき、得難い経験でした。

 実際自分は一年で一番気候が良い時期(=GW)の夕方、奥多摩を流すためだけに(!)Bを所有していた感があります。 そんなある種「贅沢」を味わえたのは得難い仲間たちのおかげです。
 実車普段は山本社長の実家(@川崎、当時のウチからバイクで30分)
に在り、色々な作業もそこでやったものです。
 ある日、給気系を山本社長がツテで見つけてきた初期型Bの
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SUツインキャブ
に換えた時のことです。年式違いとはいえ同じ車に同じエンジン、
「ポン付けでOKだろう」
とタカをくくってちゃっちゃと装着、勇んで試走に出ると・・・これがまともに走らない(?!) 黒煙を吐く位、ガスが極端に濃過ぎるようです。

 同じエンジンでも排ガス対策仕様はハイカムならぬ「ローカム」が組まれており、全然「吸ってない」ことが判りました。

 さて困った、ガスアジャストは想定外、用意がありません。そこで山本社長、Bの隣り永~く鎮座ましましている某車のカバーを剥ぐとボンネットを開けおもむろにキャブをバラし始めました。
「SUはジェットじゃなくテーパーの違う針への交換で調整するんだ。
 コイツで行けるんじゃないかと・・・」
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そのトリプルキャブのうち2基から取り出したニードル2本を、さくさくっと組み込むと・・・狙いはなんと的中!しっかりアイドリングし、踏んでも咳き込みません。流石腕利きでございます。 
 その後リセッティングの話は聞いていないのでそのまま、まあ快調に走り続けたということになります。ただし、夏場の渋滞でのパーコレーションには悩まされました。その対策も社長の繰り出した荒技・・・

ラジエター横のバルクヘッドにホールソウで穴を開け、そこに水冷バイクのクーリングファンを装着、キャブ本体に直接冷気を当てる!

・・・で解決したのでした。訊けば某英国車の日本仕様にはなんとバッテリー冷却ファン(!)があり、それに倣った由・・・流石です。
 Bを持って得たあともう一つ、

 身銭切った愛車を簡単には貶なせない

 という感覚でした。手に入れる前、当然自分達にもブラックバンパーの悪評は不安ととともに届いていました。しかしそれが杞憂だったことはこれまでお読み頂ければご理解頂けるでしょう。この、MGBオーナーに取っても不名誉な風評を流布させたのは誰か?

 身銭を切ることなく「借りてきた」車をちょこっと転がしただけでささっと書きあげた文章と、その車を気に入り、少なからぬ決心(?)の後その車を買い日々を共に過ごし、得られた所有者の印象とは同じ
 Impression
 でも重みが違います。

 ある車のオーナーがその車の印象を問われ
「ダメな車」
と言う時には、本当にそうだとしても(笑)そこには愛があるように思います。

 以来、自分は自動車雑誌に書いてあることを鵜呑みにすることはなくなりました。自動車ジャーナリズムなるものの無責任さを知ることができたのもBのおかげなのです。

 ・・・一方、Bへのニードルのドナーとなった車こそトップ画像、
 Big Healey
 なのです。山本社長は同車に思い入れあるらしく 、ヒストリーのしっかりした(=古くから日本にある)一台をNWコンディションながら永く持ちつづけていました。

 そして画像のイラストは社長ご結婚の際披露宴にて
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(スワップミート?)
プレゼントしたもので、その車が直ったら・・・という気持ちで描きました。また、そのナンバープレートには
 Just Married 2000
 の意が込められています。
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  1. 2013/08/23(金) 21:40:40|
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7-0) 自動車プロレタリア文学(?)

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 お盆休みなので今週は休載・・・とも思いましたが(笑)
 開設以来折角続けてきた毎週末更新、途切れさせるのもなんなので・・・

 今回は本屋時代の原稿(←スタッフブログなるものがありました)
の転載と致します。
 数年前の文章ゆえ時制にやや問題がありますがご勘弁を。 


 ワーキングプア、ニートなど「格差社会」用語が喧しいなか
 プロレタリア文学の代表的作品、小林 多喜二 の「蟹工船」が広く読まれ、共感を得ているようです。 (←そんな話題がありました)

 自動車関連書籍でも同様に、労働者の悲哀を描いた作品があることをご存知でしょうか。

 以前、NAVI(←今は亡き二玄社)誌上で 某社組立工場に「潜入」その労働実態を報告した連載がありましたが、その母体となったのが
「自動車絶望工場」(講談社文庫)

 
(↑加筆増補版が出ておりました)

です。連載の筆者がこの本について述べていたこともあり
 真似というよりトリビュートだったのでしょう、内容、読後感とも良く似た双方とも非常に良くできたルポルタージュです。
 NAVIの方は単行本化されておらず、今読めるのは「絶望工場」のみですが '70年代の話でありながら古さを感じさせない、普遍的な人間模様を炙り出す佳作です。

 いわば「自動車蟹工船」ともいうべきこの作品、一読してみてはいかがでしょうか。

 また同様な命題を扱ったものとして
「タクシードライバー日誌」(ちくま文庫)


(↑筆者は在日韓国人界のご意見番。映画ができそうな1作)

も、その筆致に感銘を受けました。
 これも全く古さを感じさせない内容で「居酒屋タクシー」が話題になった昨今、 当時存在しなかったそんなものが、なぜ生まれたのか、その答えすら描かれているようにも思えます。(←そんな話題もありました)

 最後に、同じ労働者の話でも「悲哀」を描いてはおらず私にはむしろ痛快に感じられたのが
「鉄を削る 町工場の技術」(ちくま文庫)


(↑切粉を舌で味わう・・・(!)くだりは感服もの)

です。これもまた素晴らしい筆致で
 工場労働者としてではない、優れた技術者あるいは「職人」としての誇り が随所に感じられる名作です。

 いずれも娯楽作品とはいえませんがそのリアリティ、ドラマ性は傑出しています。
 文庫3点、すべて東京店にはあります。(←東京店はもうありません・・・)
 

 映り込みの目立つトップ画像は先日久方ぶりに訪れた飯山は くるま工房やまもと 工場内にあった自作。
 以前差し上げたものです。

 飯山のブラックアイスによるクラッシュで失われてしまったMGBですが
 こうやって「絵」が残っていると妙に(写真よりずっと!)懐かしいものです。実車ブラックバンパーも別に気にならなかったことも思い出します。

 実はこのクルマ、山本社長、A氏そして自分の3名共同所有でした。
 駐める所さえあれば、毎日使わないスポーツカーの共同所有は、
ありです。 仲良しのお友達がいる方は是非!

  1. 2013/08/14(水) 19:37:15|
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3-2) フェザーベッド・フレーム考

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(production in progress )

 左のプラグイン、「カテゴリ」を見るとMoto項目が少ない・・・
 ということでモーターサイクルの話題を。

 GP界におけるハンドリングの導師、JJコバスが先鞭をつけた「ツインスパー・フレーム」は高性能モーターサイクルのフレーム形式として、もはやサーキットだけでなくストリートをも席巻したと言えるでしょう。

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(JJ-Kobas)               (Bimota)

 それに伴いパイプフレームも、3本のパイプによる△面とその重合で剛性を得る「トラス・フレーム」に進化。
 旧来の、いわゆるダブルクレードルといったループ型のパイプフレームは、いわば絶滅危惧種となってしまいました。そのダブルクレードル・フレームの中で唯一固有名詞で呼ばれる名品、

ノートン「フェザーベッド」フレーム

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(これは近年の製品)

についてお話ししましょう。

 数あるフレームの中でも最も有名かつ現役当時最強を誇り、当然人気も高かった一方、
 母体であるノートンの命脈が一度は尽きた(=絶滅)という意味でも、「フェザーベッド」はいわばモーターサイクル・フレームの「ティラノザウルス」といった所でしょうか(笑)

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ただし恐竜と異なり「フェザーベッド」は映画よろしく

心ある人々の力によって今もクローンが作り続けられています。その人気と実力の程(=価値)を物語る事実です。

 車やモーターサイクルの世界では、その独特のフィーリング、感触を表現するための「定形の言い回し」があります。
 曰わく、真綿で締めるような・・・とか、冷えたバターに熱いナイフ・・・とか、キャラコを引き裂くような・・・とか、クラッシュボックス、シルキー、スポンジー・・・結構あります。
 同様にフェザーベッド・フレームの「枕言葉」としては

「その羽根のような乗り心地から・・・」

 という表現があります。
 この言い回しにはじめて出会った、当時高校生だった自分は強烈な違和感を覚えました。
「何だよ、羽根って・・・」
時代遅れ(失礼)になってからも

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 マンクス・ノートン

をGPのスターティング・グリッドに着け続けたその良好な操縦性の源であるフェザーベッド・フレーム。
 そしてそのハンドリングに惚れ込んだマニアが旧式のマンクス・シングルに替えて、重く場合によっては幅広い、多くは他社製の現代的でより高出力なエンジンを載せた

 Metisse(=混血女性の意)

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(これはノートン+ヴィンセントで「ノーヴィン」)

と呼ばれる「カフェ・レーサー」の数々。
 それら多気筒―実際にはツイン―ユニットの高出力を受け止めた上なおかつ変わらぬグッド・ハンドリングをライダーに提供し続けたフレームが、当然持ち合わせているであろう雄々しい剛性感。
 それと「羽根のような・・・」という軽々しい表現はどう考えてもミスマッチと思われたのです。

 そのイメージを払拭する転機は偶然、あるアニメを見た時訪れました。

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その中に出てきた 「干し草のベッド」を見て・・・ 

 「フェザーベッドとはこれ(に類するもの)か!」と閃いたのです。
 日本でいうなら羽根布団、それも掛布団ではなく敷き布団
(ゆえにダウンではなく芯つきのフェザー・・・)なのでした。
 なるほどそれは集約的加工がなければ生まれ得ない二次(副産物)製品。高級品ということです。 上質な乗り心地の表現として相応しいことが理解できました。
 おそらくはfirm(=堅く、引き締まったの意)の言い換えだったのではないでしょうか。

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カワサキZ1のフレームのお手本(下敷き、か)とされるフェザーベッド・フレーム。カワサキとの違いは

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タンクレールの有無と、側面視で交差するダウンチューブとループ・アッパーを接合するかしないか、です。
 実際にZのフレームはフェザーベッドの、良くできた補強版に見えます。
 そして「補強前」のフェザーベッドはベッドパイプ回りの弱さゆえ発生する「縦曲げ」によって路面の不整による振動を吸収(!)していたようです。
 そしてもう一つ
 その縦曲げは構造上、ブレーキング(=前過重)時には回頭性を助ける方向に作用した・・・これが名にし負うフェザーベッド・ライド、その秘密の真相かと・・・(?)

 調べると「フェザーベッド」の逸話は 1950年、ノートンの新型フレームのテスト時の故事に由来、その比較検討対象は

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旧弊なプランジャーRサスを持つ通称「ガーデン・ゲート」シャシー

でした。「庭の門扉」と揶揄される程旧型は「ガタガタする」乗り味だったのでしょう。それに比べれば各段に・・・。

 かくして例の言い回しは表現としてはまあ正しく、違和感は受け手の問題(=自分の不勉強)だったというが判りました。
 受け手の問題として付け加えるなら
 「並みのダブルクレードルの上をゆく・・・」
 という意味が込められているのでは、とも考えておりました。
 クレードル=揺りかご即ち赤ん坊向け、ではない「大人向け」の・・・

  

高級品としてのフェザーベッド・・・ちょっと深読みが過ぎたようですね(笑)

 今稿そして3-1)Italian jobでも触れた旧いGPレーサーの逸話はこの本に詳しいです。


(版元自体が消滅、現在入手不可)
 登場車種が多岐にわたり、どこから開いても、何度読んでも飽きない
 (=覚えられない。昔 カーグラは暗記しましたが、今では・・・)
 という点でこの本同様、

「いつまでも楽しめる」マニア必携の書、と思います。

 画像は以前アップしたVロッド、その制作中でした。

[3-2) フェザーベッド・フレーム考]の続きを読む
  1. 2013/08/09(金) 21:37:33|
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2-5)アルファロメオ・ティーポ33:その2

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(production in progress )

 ティーポ33ストラダーレ続編と参りましょう。

 前稿で同車の構造について
「まるで見てきたかのように」書きましたが、実は自分千載一遇のチャンスに 恵まれ、レストア中の個体を見たことがあるのです。
 さすがにじっくり検分する、という訳にはいきませんでしたが。
 加えて当時
 同車の1/6「スクラッチ・モデル」を制作中だったK氏からは件のエンジンハンガーの芸術的形状の詳細や同車のV8が
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   モントリオール とは
「全然違うよ」等々、貴重なレクチャーを戴いたこともあります。
・・・という訳で「語る資格がある」とさせていただき(笑)続けます。

 前稿で「手作りの痕跡・・・」とも書きましたが、自分が'94年にラグナセカを訪れた際にはなんと同車3台を見比べる機会に恵まれました。そしてそこで各部の手作りっぷりを確認。それゆえ一台一台独自のディテールがあり

全く同じ車はない!

ということを理解したのでした。
 時は巡り2001年、横浜にアルファロメオ「ムゼオ」のコレクションがやって来た際には
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「ペラ」の盾で有名なこの個体
を見ることもできました。

 これだけの数、見たことがあると「縁がある」と思い込んでも・・・(笑)
 さて各個体のディテールに触れましょう。

 まず有名なところではヘッドランプが4灯の極初期の個体が2台
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(ワイパー、グリルに注目)
ムゼオ(上記)と日本にあります。

 ちなみに自分、似非研究者なので(笑)シャシーナンバーの照合まではやってません<(_ _)>

 そしてラグナセカにはいませんでしたが、同じF・スカリオーネ・デザインのBATシリーズや
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2000スポルティーヴァ     あるいはディスコヴォランテ
らにも一脈通ずるバンパーを持つ個体
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あとは「通常」の個体
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(スクラン57号の個体。通常タイプの中でも美しいバランス)
と大まかに3タイプに分けられそうですが・・・その通常タイプの中でも
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(グリル、サイドウィンドウに注目)
こんなディテールの違いがあります。 
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 ラグナセカでは各個体が走行していましたが、その「音」はさぞや快音!
と思いきや・・・あまり印象に残ってません。 ストラダーレゆえ結構消音されていたのでしょう。周りは轟音(爆音?)ばかりでしたし(笑)

 その中で最も精力的に走り込んでいた1台、その個体はラップごとに音、それもメカノイズ(!)がだんだん大きくなってゆくのが判りました。
「あれの音、ひょっとしてメタルとかじゃね?」
「う~ん、なんかそんな感じだねえ・・・」
同行の仲間と無責任な噂話をしていたのを憶えています。

 ティーポ33ストラダーレの売りモノはめったに出ないのですが、外誌で1台が売りに出ていたのを発見したのは、その年の暮れのことでした。
「あのクルマだ・・・」 

 トップ画像は前稿トップ画像作品、制作中のヒトコマです。
  1. 2013/08/02(金) 21:06:53|
  2. Illustration&Work
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