マグネシウムの話:その3

 
(このホイールの色!えもいえぬ素晴らしさ・・・)
 マグネシウムは曲がりません。
 だから曲がっては困る部分に使われます。剛性、強度が要求されるがゆえリブが立ち肉厚がたっぷり与えられるような、ゴツく「重くなる」部分に使ってこそ意義のある金属素材がマグネシウムなのです。

 例えばカーボンモノコック登場以前のフォーミュラカーのバルクヘッド。この部分、設計者の意図
(サスペンションジオメトリー、強度、コスト、製作方法といった設計思想)
が端的に現れるところです。そしてレーシングカーは基本的には1シーズン保てばよいように造られます。長期にわたる耐久性は求められません。この点も設計者にマグネシウムを選択させる要因ではあります。当然防錆処理

(=表面処理、これについては後日マグネシウムの「色」項を設けます!)

もおざなりになりがちです。結果何年もしないうちに粉を吹いてしまい、直ちに破壊にはつながらないにしても寸法精度等、継続使用ははばかられる状態になるでしょうし、実際には異種金属接触部分であるネジ部等は電蝕で、抜けてしまう可能性があります。そうなれば「全損」です。以上のように、重要部材にマグネシウムを使ったレーシングカーを長期間維持するということ難しいことなのです。
 ラグナセカでは旧いF1がたくさん
761.jpg
元気よく走っているのを見ました。
各車両よ~く観察すると・・・
フロントのサスペンションピックアップを兼ねる
バルクヘッドはアルミの分厚い(=サスペンションアームの幅)
削り出し部材をこれまた厚い(1/2インチくらいか)アルミ板で 
ml23.jpg 
サスペンションアームごと挟む形式に改変されていました。
sshadow.png 
ちなみに旧いシャドウはオリジナルがこの形式
 だったようで他車は、その走行性能維持のため地元ビルダーの(?)勝手知ったる方法でリビルトされた、ということだったのでしょう。

 それじゃあミッションケースとかはどうなの?

 モノコックが「一品物」なのに対しミッション等は極く少量とはいえ「製品」です。当然商品性のための表面処理は施されているはずですし、何よりビートルを筆頭とするマグネシウム・ケースを持つ量産車もあります。それほど神経質にならなくてもよいはずです。

 ということで幸いなことに (?)自分、通常使用の間にその展性の乏しさによって割れたマグネシウム鋳物を見たことはありません。
 逆にその

 展性が問題になる部位にマグネシウムを使うのは正しい設計ではない!

 ということなのです。

 じゃあ、通常ではない使用の場合は?
 
 ・・・割れてます!・・・to be Continued.

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  1. 2014/02/28(金) 21:17:52|
  2. Magnesium&Race
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Breaktime:カスタムバイクその後

 マグネシウムの話、まだまだ続きます!

 技術解説等はマグネシウム並みになるべく「軽く」しようと考えておりますがそれでも、金属だけに「カタく」なりがちで・・・()
 
ブレイクとして今稿は自転車の話など・・・

019.jpg   

既にご紹介した通りMTB改クルーザーAtavism
そこそこ良い味に仕上がったのですが、
あまり乗る機会がありません。

このポタリング車の時は

bc - コピー

「ラインナップからはみ出る」

でしたが、当時よりさらに乗らなくなった上

 もんつぁ  キャリア  
カザーティピクニカ

 がある今その出番はほとんどない、加えて入魂のカスタムバイクとはいえ完成しちゃったところでちょっと満足してしまった()感覚があるのは否めません。

 ということで売りに出すことにしました。
 もちろんネットオークションです。商品説明をクド~く書き過ぎたのか()なかなか入札はありませんでした。そのまま「何ラップか」置いておくと・・・入札がありました。ところがその入札者氏
「パーツは要らない、フレームだけ欲しい」
とのこと()確かに今では見かけない「ヴィンティッジ」なフレームですが・・・せっかく苦労()して集めたパーツなのに・・・でも
「気が向いたらもいっぺん似たような自転車が組める」()
と気を取り直し()フレームのみの取り引き(&値引き)を承諾、粛々と全バラのうえ発送しました。結果的にまた自転車パーツの小山が一台分、出現することになったのです(笑)以上を読んで

 あのクルーザーと同じものを作って欲しい!

という奇特な方(笑)がいらっしゃいましたらご連絡を。とはいうものの・・・重要なパーツが欠けてしまいました・・・


 パーツ入手の都合と見た目シンプルさ優先で「Rコースターブレーキ、単速仕様」で特に不満はなかったピクニカですが、その昔乗っていたのは内装3段
(ディテールの記憶からスターミーアーチャーかと・・・)
それに比べれば現在のギア比では高速域(!)の性能にやや不満が。その動力を人力に依る自転車、ワイドレシオ化が高性能化に繋がるのは自明です。
「何とかならないものか・・・」
と漠然と考えていたところ、ネットオークションで正に「珍品」といえるリムを発見しました!

リム  穴なし   

(スポーク穴)未加工、素材状態の16インチリムです。

 普通16インチリムは最大28Hまで。それ以上スポークを増やすと剛性過剰というよりニップル間隔が狭くなり過ぎ、工具が入らなくなってしまうからでしょう。
「このリムで・・・あのシマノ内装3段ハブが使える・・・!」
28Hの内装ハブは流通してますがやや高価です(笑)わざわざ新たに入手してまでは・・・と思っていました。そして「余っている」シマノ3速ハブは36Hです。
(40Hなら穴一個飛ばしで20Hリムと組み合わせる!という荒技も)
このリムさえあれば、36Hに穴あけ加工してシマノハブと組むことができるのです!
 早速落札。リム単品ゆえ安価でした(笑)すぐさま行動開始です。

マーキング

まず鉛筆でマーキング。
実測周長から割り出しましたが、
なぜか最後は1ミリほど狭くなってしまいました・・・(!)でも・・・
問題なし!あってもカスタムバイクのお約束「自己責任」です。
ポンチ 
穴あけガイドとしてポンチを打ちます。
穴あけ中 
穴あけ!ボール盤なんぞあるわけないです(笑)
ピンバイス  拡大中
とりあえず細い穴を。そして刃を交換、広げます。 
アッ
「アッ!」
刃先が走って・・・でも問題ありません(笑)
バリ 
バリが出てます。これがアルミの「展性」の成せる・・・(笑)
  穴開け完了 面取り
バリ取りにはドリルではなくリューターを使いました。
面取り中
加工終了。
 まちまち
  穴が中心線からズレ「まちまち」なのはご愛敬で・・・(笑)
早速リム組みです。
半分 
このハブのスポーク穴は引っかけ式長穴(=2ヶ1組)
ゆえこういう組み方が可能でした。
スポークは長さを計算で割り出し、
オーダーを受け付けてくれるショップに注文、これも安価でした。
黒にしました。
TS3Q0171_20130812150857526.jpg 
手製のリム組み台。
16”36H   
完成!
スポーク間隔がとても密なのが判りますか? 
長くなったので・・・to be continued.

  1. 2014/02/21(金) 21:23:30|
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マグネシウムの話:その2

 
(サスのない時代のアラヤ、Mg鋳造MTBフレーム!思わず買いそうに・・・)
 マグネシウムの話の続き、その「展性」について・・・

 マグネシウムは曲がりません。
 棒状なり板材なり、物が曲がる、ということはそのアール部分の
「外側が延びる」
ことを意味します。ところがマグネシウムはほとんど延びない
(=展性に乏しい)ので、延びきれず割れてしまうのです。その軽さ、感触、音そして割れっ振りから
「マグネシウムは瀬戸物みたいなもの・・・」
という文章を読んだことがあります。
 確かにお茶碗は曲がりませんよね?元プロとしては素直には承伏しがたいものがあるのですが、まあ言い得て妙かなと(笑)
 実際、破断したマグネシウム鋳物、その破断面を見ると陶器のようにも見える粒状結晶が確認できます。

 ところで、この「破断」とマグネシウムに付き物の「腐食」とは直接の関係は実はありません。いかに酸化しやすいマグネシウムと言えどその鋳物が健全ならば、たとえ海辺に放置したとしても腐食が元で破断に至るには何年もかかります。
したり顔で・・・
col.png
「このマグホイル腐ってっから割れるよ」
 などということはないのです。
 自分は割れたマグネシウムホイールを見たことはありません。設計強度不足なのかレース中、ホイールのスポーク部分が折れた(!)Cカーは見たことがありますが。聞いた話では昔、イタリアンバイクDに標準装備だった某マグホイールが
「必ず割れる」 (PHMCN氏談)
そうな。そのホイール、コスト的に鍛造はあり得ないので鋳造品であることは確実。それがマグネシウムかどうか未確認ですが(たとえアルミとしても)その理由を考察してみると・・・
 その鋳物(ワークといいます)はバンクしてコーナリングするバイクのホイールゆえサイドフォースはかからず、荷重は全て縦方向です。カーボンと違いマグネシウムは座屈では壊れ難く、となるとその破断の力学的要因は
 制動と加速の捻りストレス
 ということになります。それは駆動力とタイアのグリップ反力に起因するものですから、破断はスポーク部ではなくホイールハブ近くで起きるはずです。量産車ということでその破断は結構頻繁に起こっているはずですが死傷事故、リコール等の問題は起きていないようです。その理由は恐らく、割れるであろうホイールハブ部には強靭なブレーキディスクあるいはドリブンスプロケットが締結されておりそれが命綱として機能していた、ということなのでしょう。しかしいくらマグネシウムが延びないとしても、その曲げ限界まで当該部分が歪むというのは考えられません。ゆえにその原因はマグネシウムの展性に起因するものではないと思われます。ではその原因とは?
 考えられるのが鋳物自体の不良です。

 ここでマグネシウムの展性からは脱線しますが、鋳造について少し。

 上記バイクホイールの破断は製品すべからく、のようなので不純物等「湯」の問題ではなく鋳造上の問題でしょう。
 「鋳造法案」が適切でなかった、ということです。

 一般的に鋳物にはその上部に「あがり」と呼ばれる、製品にする際には切り取ってしまう「突起」が必要です。
 鋳物は注湯後徐々に冷え、体積を減らしながら凝固してゆきます。その冷却収縮の際、流動性のある(=熱い)湯をその体積減少分供給し続けながら徐々に凝固させなければなりません。さもないと鋳物に「巣」ができる、というかスポンジ状に密度の低い(=弱い)部分ができてしまうのです。その、凝固時の「熱い」湯の供給源として最後の最後に固まる「湯だまり」が
「あがり」なのです。
 また、その「あがり」のワークの「密度を高める」効果を含め(上からの)
「押し湯」という言い方をする場合もあります。

 溶湯を直接、型に注ぎ込むことはありません。場合によってはそのルート(湯道とか堰といいます)を遠回りさせたりもします。
 「鋳造法案」とは湯の流れの上で概念として、

 「あがり」の「一番遠くから」徐々に冷えて(=固まって)ゆくように

・・・例えば「あがり」の周囲に保温材を埋め込む、あるいは上記「湯道」の設定といった・・・鋳型に加える種々の調整のことです。
 上記ホイール破断の原因はこの鋳造法案の間違い、の可能性は大いにあると思います。増してやハブ部分、スポーク基部であれば肉厚の変化が著しい部分です。凝固の際、薄い(=放熱の良い)部分から固まってしまい肉厚のある部分の「湯を取り合って」しまうのです。 結果としてできてしまう密度が低く、強度も劣る「鋳造不良」部分を「いつまでも冷えず熱いまま」という意味で「焼け」と言ったりします。
「押し湯が効いていない」
 という言い方をする場合もあります。実際マグネシウムは軽量ゆえ押し湯の効きが悪く、そのためマグネシウム鋳物はワークより、後で切除してしまう「あがり」の方がずっと大きい、鋳造法案設定となります。

と、まだ「展性」まで行けてませんが・・・(笑)今稿はここまで。

  1. 2014/02/15(土) 18:06:10|
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正常性バイアス・・・?:その2

 
(新車時はこんな。いいなあ・・・)
 マグネシウムの話題で中断していたステップバン・トラブルの話の続き・・・
 ・・・さて飯山へ、少々気が重いトラブル報告です。なんと言っても無償
貸与中ですから。同時に山本社長にあれこれ教えを乞います。

「ウォーターポンプが壊れそうです。プーリーが首振ってます」
「すぐに停めなきゃ!停めた?」
「一応。でも結構走っちゃったかも・・・。ブツは当然メーカー欠品で、
ベアリングの打ち替えで対応・・・」
「うんわかった。俺がやる。外して送って」
「その、外し方なんですけど・・・クランク・プーリーってテーパー勘合?」
「・・・?なんで?」
「いやプーラーが要るかと・・・」
「ああ。キー溝はあったっけなあ・・・まあ、ストレート。プーリーはボルト
外してこじれば・・・」
「了解です!あとタイベルも外さないといけないみたいなんですけど・・・」
「そうだね。ついでに替えちゃおう。新品在庫あるからいっしょに送るよ」
「そ、そうじゃなくて外し方・・・」
「圧縮上死点出しといて、テンショナー緩めて・・・」
「上死点って、プラグ外して(=圧縮抜いて)クランク(プーリー)ボルトに
スパナ掛けて回せば・・・?」
「!それでもいいけど、ギア入れて車押せば?」
「おおっ!」
「ジャッキアップしちゃだめよ」
「了解!」
「そうしながら、覗き穴からミッションのリングギアのマーキングが見える
はず。圧縮と排気はどう見たっけか・・・(←360°クランク=タイプⅡ)
後で調べて送る」
「あと、プーリー緩める時の回り止めはリングギアにマイナスドライバー、
(咬ます)で大丈夫ですよね?」
「うん、大丈夫」
「了解しました!できそうな気がしてきました。とりあえずやってみま~す。ありがとうございました」 


 実は「カムシャフトのある」エンジンの重整備は久しぶりです。ずっと、
4輪を含め
Cus10003.jpg
2ストロークが多かったもので・・・(笑)
 ヴィンティッジモーターサイクルよろしくプラグ穴から棒を突っ込んで上死点を確認したところでその日は作業終了。

(↓のちの同社「シティ」を思わせる先進性!)
カタログ
(ステップバンのカタログより)

 翌日このアドレスが。
 懇切丁寧なレクチャー、閲覧してから確認すると・・・排気上死点でした(笑)緩めてなくて正解でした。
 改めて圧縮上死点を出し作業再開・・・何の問題もなくウォーターポンプが外れました。飯山へ即発送!
 最初の心配は全て杞憂、でした(笑)ただ新たな杞憂が一つ・・・件のHP、別項を見ると
「ウォーターポンプ、すぐに止めないと本体にダメージが・・・そうなるとベアリング交換だけじゃ済まなく・・・」
これって飯山号のことじゃん・・・?
FV.jpg
(いいなあ、ちゃんとしてて・・・)
 後日山本社長よりTel.
「だ~めだよ、すぐに止めなきゃあ。素人じゃないんだから・・・。削れちゃってるよお!」

ああなんたることか!・・・to be continued.

[正常性バイアス・・・?:その2]の続きを読む
  1. 2014/02/07(金) 23:01:55|
  2. Old Car
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