Punto debole di Abarth :アバルトの弱点


(多くのアバルト、そのオリジンたる大衆車フィアット600)

 だいぶ前ですがAbarth-Simca稿にて自分が
「・・・モノミッレからシムカへ鞍替えした・・・」
旨、記しましたがその理由についてちょっと(?)掘り下げてみましょう。

 初期のアバルト各車のほとんどはトップ画像、フィアット600をベースにしています。いわゆる「羊の皮を被った狼」的に外観はほぼそのままにスープアップを図ったものと、
TC_20141216154900fe8.png
(原型 +α )
 そのプラットフォーム・シャシー(ボディ構造上は近代的なモノコック =
応力外被構造に近いもののより原始的な、それだけで走行可能な剛性が与えられている床板構造)の上に全く別の、流麗なスタイリングのボディを架装したスポーツカーがありますが、
モノM
(原型とどめず)
 両者とも、機械的な中身はぶっちゃけ同じなのです。

 上記のように多数のアバルト、その高性能を支えたフィアット600シャシーですが当時のタイア性能ではあまり問題にならなかったものの、そのRサスペンションには(機械的には)克服し難い「弱点」を内包していました。といってもそれは600シャシー固有のものではありません。その弱点とはスウィングアクスル(swing axle=揺動する車軸)というサスペンション形式自体にあったのです。
 スウィングアクスルとは最も原始的な後輪独立懸架。その登場以前の固定軸(リジッド・アクスル)がデフを挟んだ、いわば「一本棒」なのに対しドライブシャフトを分割、間にユニヴァーサル・ジョイントを挿入し左右後輪が別々に動けるようにしたシンプルなサス形式です。構造上ドライブシャフトがサス・アームを兼ねます。
 それまでの固定軸では片側後輪だけが障害物を踏んでも固定軸ゆえ後車軸全体にその影響が及んだものが、後輪独立懸架(IRS)となれば片側のみで吸収できる⇒乗り心地と接地性(ロードホールディング)が劇的に向上する優れた、先進のサスペンション形式としてスウィングアクスルは普及していきました。当時どれくらい「高級」なサス形式だったかは、その高性能と先進性で知られるある種のドリームカー、あるいはエグゾティックカー、スーパーカーの元祖ともいえる
cg1.png
メルセデス300SL
 に採用されていることでもご理解頂けるでしょう。

 そしてそのスウィングアクスルの欠点とは・・・「ジャッキ・アップ」なのです。

 スウィングアクスルはそのUジョイントの数(片側)が現在のIRSの両端2ヶ所に対し1ヶ所、即ちジョイントから先のシャフトと後輪はいわばリジッドなのです。そのため、後輪接地面に大きな横力(=路面からのサイドフォース、摩擦力)が掛かると・・・その接地面を軸とした、ドライブシャフトを持ち上げる力(ジャッキ・アップ、tuck)が発生してしまうのです。
tech_pic_sus_swing2.jpg 
(最上図参照:反対側も車高変化に連動するので逆ハの字に!)
この現象を実際の車に当てはめると・・・
その力は、デフ即ちボディ全体を持ち上げることになり、
車の後部が跳ね上げられるような動き、として現れます。
VWHandlingphotos.jpg
(VWビートルも同じ形式なので・・・)
ビヨン!と・・・
 850tc.png
(危ないっ!・・・850TC)
場合によっては車が転覆することもあります。
crush.png
(実際アバルト850/1000TCは転覆し易く、ツクバで見たことも・・・)

 これを防ぐには・・・
まず車高(と重心)をなるべく下げ
shackotan.png 
(ベッタベタ・・・!)
 ドライブシャフトに予め下反角を付けておくこと(線図中段参照)。
 サスがなるべく動かないように堅く、ストロークも短くすること。
 このサス・セッティングが現代のセオリーに反していることはお判り頂けるでしょう。当時の低グリップなタイアではそれでよかったのです。
 ちょっと話が逸れますが・・・
 スウィングアクスルの欠点はタックではなく「サス揺動に伴うキャンバー変化の大きさ」と捉えることもできます。それをドライブシャフトにUジョイントを追加し是正した例(他車)、非常に解かり易い図だったので以下に。
sa.png 
(路面変化に対しタイアの角度変化が少なくなった’65型)

 話はアバルトに戻します。
 スウィングアクスルは、前述300SLの例を持ち出すまでもなく前の重い車の方が相性が良いようで、Fエンジン車の転覆はあまり聞いたことがありません。
spit.png  bellett.png
(スピットでは皆無、ベレットは少々聞いたことが・・・)
 後端の重いRエンジン車の方が当然ジャッキ・アップの影響は大きい、ということです。そしてかのPF先生が名著「ハイスピードドライビング」(1963年初版)で当時既に喝破していた、速く安全なRエンジン車のサス・セッティング・・・

 Rダンパーの、通常よりずっと強い「伸び側」ダンピング・フォース

 それが特にスウィングアクスル車においては必須なのは、キャンバー変化を抑えるという観点からも明らかです。
 ところが、翻ってフィアット600シャシーを見つめると・・・
 その必要とされる「強い伸び側ダンピング」が構造上、与えることができそうもないのが問題なのです。
600D.png
(サス・ストロークはこれだけしか・・・)
shock.png 
(ダンパー自体も、こんなもの・・・)
 プラットフォーム・シャシーゆえ構造上、床板にさほど高低差をつけられないこともあって(しかもストロークを短くすること自体にも意味があった)、伸び側と縮み側ダンピングで大きな差がある(=容量の大きな)ダンパーユニットは物理的に収まらない・・・
 Rサスペンションハウジング部分のスペース不足がフィアット600系アバルトを速く走らせるための、文字通り足枷となっているのです。

 この件に関しては実は例のマイクロスポーツで経験済みでして・・・
 セドリック用だったか8段階調整ダンパーに車高調整スプリング受けを着けた「SRSクボ」謹製スペシャルRショックを使っていた当時、8段のどこに合わせてもしっくりこないのに悩まされました、
 伸び側がちょうどよい具合(ロール感とか重いリアの煽り収束感)だと縮み側が堅過ぎて突っ張ってしまいサスの動き自体が悪くなり、縮み側で合わせると今度は明らかにRエンジン車特有の煽り感と内側後輪の浮き上がりおよびオープン・デフ(LSDなんてある訳ない)による空転が発生してしまい・・・8段階調整といっても普通の市販品、伸び縮みの変化は連動だったのです。結論的には、

 PF先生の言う通り「伸び側が桁外れに強い」特注ダンパーが必要(!)

 との認識が自分の中でできていました。しかし伸圧別調整(ダブル・アジャスタブル)はレース用の、それもフォーミュラとかに使われる超高級特注品のみ、市販品などありません・・・(T_T)
 しかもセドリック・ダンパーは純正より当然長く、車高とサス・ストローク(=バンプ・ステア)のせめぎ合いはマウントラバー(ブッシュ)の薄さ(=寿命)とバーター・・・
「Rサス・アッパー・マウント位置を溶接嵩上げしなきゃならんのか?」
といった具合に、かなり厳しい条件で試行錯誤を重ねた上での結論でした。

 上記のようなサス・セッティング作業をもう一度、ダブルバブルでイチからやり直す・・・?実車のRサス周りを見て
「ああ、手を出さなくてよかった・・・」
ちょっとほっとした自分が居りました。

 そしていささか旧弊となったフィアット600の後継車として、その後のアバルト各車のベースとなった
1000.png
シムカ1000
 のシャシーのその部分に目をやれば、そこにはずっと豊かなスペースがあるです(!)
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  1. 2014/12/16(火) 15:07:45|
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