Hillclimb Special:その2

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(Porsche's hillclimb Special,909`Berg Spyder')

 さて、ヒルクライム専用車の歴史について少々・・・

 前稿の通り、現在のようなモータースポーツ、公式競技としてオーガナイズされる前からヒルクライムはありました。

 ヒルクライムに要求される性能はその原初から唯一、登坂性能すなわちパワーとトラクションです。
 他にもスピードを殺さず曲がるためのコーナリング性能とかもあるにはありますが何より重要なのは出力と駆動力、そしてそれを支える軽量化と駆動輪接地力(=後輪グリップ)なのです。そしてそこに専用車の生まれる必然性があります。ヒルクライム・スペシャルのはじまりは

 軽量化と後輪接地性に特化した改造車

 なのです。ヒルクライムは、どんなにアクセルを踏もうと急勾配のため他のモータースポーツよりスピードは低く、比較的安全といえます。ならばドライバーのプロテクション(=ボディーワーク)は空力を含め最小限(≒なし)でよかろう、ということで昔からボディはペラッペラ(もしくはストリップ=裸)が一般的、競技車ゆえ保安部品もなし・・・ヒルクライム・スペシャルの誕生は以前話題にしたホットロッドとの近似性を感じさせます。

 ヴィティッジ期のマシンにはこんなBackyard buildなスペシャルが、多々ありました。
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(しかもこれはセンターステアリングの単座!アメリカものですが・・・)
 軽量化のためボディー外被は一切なし。そしてトラクションのための後輪ダブルタイア・・・と正に上記の通りなのはお判り頂けるでしょう。

 トップ画像はポルシェが造ったヒルクライム専用車・・・
909.png
909ベルクシュパイダー
 です。ちなみにBergとは山岳のことです。
 当時の同社持ち駒たる
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カレラ6                 カレラ10  
 等のフレーム、パーツを使って仕立てられたこの車。(ポルシェなりの)ペラペラボディ、簡略装備、後輪グリップ、機動性そして好視界に特化したスペシャルなのです。ダウンフォースへの意識の発露は感じさせるものの(笑)空気抵抗は無視したであろう、極端に短かい前後オーバーハングに軽量化と運動性への、そして当時としてはアップライトな着座姿勢にショートホイールベース化と好視界への、それぞれ配慮が感じられます。
 ちなみにこの車の経験が後のタルガフローリオ・レーサー、908/3に繋がるようですが同車については別の機会に。

 ポルシェをして「ワークス・レーサー」を造らせるほどのヒルクライムの価値です。ヨーロッパに数多あるレーシング・コンストラクターもこぞって、それぞれのヒルクライム・スペシャルを仕立てたことでしょう。
 前稿で取り上げたFiat600用大容量Rサスのスペシャルもその一例です。
berga.png 
(大きなRサスユニット以外はそのまんま・・・)
 オリジナルカーから主要メカニズムをそっくり移殖するという手間を考えるなら
「いっそのことミドシップにしてしまえば・・・」
とも思えますが、このタイヤです
「リアエンジンのトラクションを活かしたい」
という考えも成り立ちます。
 そう、重いエンジンを車体後方に突き出すRエンジン車はその後輪荷重(過重?)による優れたトラクション性能ゆえ、ヒルクライム・シーンにおいては今もなお絶大な人気を誇っています。
 加えてヨーロッパ各国にはその国独自の「コンペティティヴなRエンジン車」ともいうべき存在がそれぞれにあるのです。そしてそれらは一様に小さくて無骨な「弁当箱」風ですが(笑)それでいて「山椒は小粒でピリリと辛い」あるいは、いわゆる「羊の皮を被った狼」的な魅力を放つスポーツセダン、愛すべき「ツーリングカー」たちなのです。

 まずイタリア代表は・・・フィアット850です。
850.png
(この車の改造はAbarthか「それ風」にならざるを得ませんね・・・)
 前述600も、もちろん500もそうです。しかしどちらも少々旧くあまりコンペティティヴではありません。それでも、大改造を施し乗っているのはオーナー(であろう)ドライバーの、その車への愛情に他ならない、と思います。

 そして何といっても一番人気、フランス代表・・・
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Simca1000Rallye2(&3)
 です。アバルトをして仏車にもかかわらず600の後継車とせざるを得なかった(?)優れたシャシー性能はボディーを着せ替えるまでもなく(笑)速い!ということなのでしょう。
 とはいえヒルクライムの伝統は活きていて見た目はシムカ1000でも中身は・・・というスペシャルもいます。
hcsimca.png 
(車体後部、パイプフレームになってます)
 イタリアにおける600(ベースのアバルト)にあたる存在としてフランスには・・・
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Rnault 8 Gordini
 がありますがこちらも600同様やや旧く、何よりもはやコレクターズ・アイテムになってしまった感があり、ヒルクライム・シーンにはあまり登場しません。

 そしてドイツ代表は、VWビートルではなく・・・
nsu.png 
NSU1000TTS
 です。この車の特徴はそのエンジン冷却方式です。VW(そしてポルシェ)を擁する彼の国ではそれに馴染みがあるゆえ拒否反応(?)が少ないのか、はたまた
「後部に突き出すなら軽い方が・・・」
という判断だったのか、それは「空冷」なのです。
 実際高負荷時、熱的には苦しいはず(チューニングの際は一層)で、冷却のためエンジンフード(後部)は画像のように「半開き」が基本です。それが機能だけでなくアバルトに通ずる、高性能を暗示する外観的魅力ともなっています。フロントエンドにこれ見よがしに付加されたオイルクーラーも、アバルトやポルシェそして・・・
gtr_20150108205223904.png 
KPGC10
 にこれまた通ずる格好良さではあります(笑)

 そして英国ですが・・・
 イギリスに山岳はありません。ゆえに彼の地のヒルクライムとは文字通り「丘登り」、閉鎖された荘園内の緩い勾配のアクセスロードでのタイムアタック、といった雰囲気のものになり、Sprintingと呼ばれたりもします。ちょうど
Goodwood Festival of Speed
 のタイムアタック・シーンを想像して頂ければ、と思います。
 そこでイギリス代表は、ヒルクライムよりサーキットでその真価を発揮している・・・
imp.png
Hilman Imp
 です。とはいってもドーヴァーを渡り、大陸のヒルクライムに果敢に挑戦している猛者ももちろんいます。
 名機コヴェントリー・クライマックスを積む同車ですが日本ではほとんど馴染みのないルーツ・グループのぶっちゃけマイナーなセダン、ご存じない方も多いでしょう。実は自分も実車見たことがありません。

・・・とパワーユニットが後方へ突き出す、構造的にはある意味「異形」ともいえるリアエンジン車の、アンバランスな魅力
(自分には後輪を軸に、ボディー前半部とエンジン部分はバランスするように見えます・・・)にやられてしまっている仲間は世界中にたくさんいる!ということでした(笑)

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  1. 2015/01/08(木) 10:48:30|
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