Aerodynamico:GP空力史

 
(’79Honda NR500)

 先週に引き続き・・・

 モーターサイクルレーシングにおける空力

 の話題です。今回は形状的進化について、やはり見て解る範囲で(笑)論じてみましょう。

 まずはトップ画像、2st.に対するトルク不足を常識外れの高回転化によって払拭しようとしたホンダの野心作、NRです。そのエンジンは・・・

 シリンダーウォールの少ない、燃焼室形状がちょっと歪な4バルブV8(?!)

 と言えるような特殊なものですが、今回それについては触れません(笑)しかしNR、その車体構成の方も恐ろしく独創的で(うまく走らなかったのはそのせい?w)見ての通りスクリーン部が極端に小さい・・・

 カウリングの空力処理

 も同様に全く新しいものでした。
 それまでのカウリング形状は(1958年に禁止された)前輪をも被うエアストリーム・・・
dustbin(ゴミ箱。何もかも放り込む、の意かw)型
mondial 125
(S・ミラー駆るモンディアル)
 の流れを基本的に受け継いだままで、冷却等機械的要件や前車軸以内に収める、といったレギュレーションを満たしつつも車体全体を砲弾型に近づけ空気を・・・

 上下左右均等に受け流す

 ことを念頭に入れたもの、でした。ところがNRにはそのスクリーン部で気流を・・・

 左右に分断する

 意図が感じられます。気流を積極的に側方に逃がす(=上方へ行く分を減らす)ことによって有害な揚力(リフト)を抑えたいという、まるで当時のマーチの・・・
R・ハード 御大 ・・・    の 影響
hard.jpg   マーチ782
(ブランビッラ&ロンルバディ) (切り立ったカウル前端)
 を受けているかのようです。
 2輪レース界ではリフトは当時既に広く知られていましたが、それは走行性能ではなくライダーの快適性に関わる事象でした。ストレートでFスクリーンに潜り込むとヘルメットがリフトすることによって起こるチン・ストラップによる逆ギロチン(=首締めw)がライダーを悩ませていたそうです。
 ホンダの空力設計担当者にそういったライダーの声が届いていたかは定かではありませんが(笑)2輪車の空気抵抗を減らすことに対して

 積極的に空気の流れを変える

 というアプローチを持ち込んだという点でNRは画期的なのです。

 ただしその形状、狙った機能が達成できていたかかどうかはともかく「美しさ」という点では成功したとは言えないでしょう。格好悪いです(笑)このNRの新思想にイタリアの美意識を融合させたのが・・・
pf1.jpg
Ducati F1 Pantah
 と言えるでしょう。それまでの、上半身を潜り込ませられる大きさの・・・
YZR.png
 バブルスクリーン
 とは一線を画す小さい(ヘルメットしか入らない)スクリーンには明らかにそれを・・・

 カウル全体に対する「フラップ」

 とする意図が感じられます。
 NRにはスクリーンに「平板もの」を曲げて使い、高価な熱成形アクリルを使わずに済ます(←ワークスマシンなのに節約?)といった意図もあったようですがそこを、美しさのために譲らなかったところにイタリアのデザイナー(スタイリスト)の見識を感じる、というのは思い込みが過ぎるでしょうか(笑)

 かくして生み出された(?)非常に斬新かつ機能的しかも精悍なF1 Pantahの格好良さは誰もが認めるところでしょう。実際そのスタイリングの影響力は相当なもので、以降のレーシングマシンには多かれ少なかれF1 パンタの影響は感じられます。


 以上は車体前半の話です。今度は後部の話題を。
 まず優れたカウリング形状の著例として挙げたいのが・・・
ハーリー・デイヴィドサン(笑)
HD-KRTT.jpg 
(Harley-Davidson KRTT)
 のロードレーサーです。
 流石に超高速のデイトナのバンクで鍛えられた(!)だけあってその空力性能は優れており(=最高速が伸びる)今世紀に入っても大方のレーシングマシンはこの形状を踏襲していた、というか逸脱できなかった(笑)と言えそうです。
 大柄なアメリカン・ライダーを想定したのであろうライダーをすっぽり包むカウリングに奇を衒ったところは全くなく、というかむしろ非常にオーソドックスですがその・・・
テールカウル形状と大きさ
chesterf.jpg 
(我等が中野!のマシンもよく似てます)
 に空気抵抗減少の秘密があるようです。

 しかし、そのなだらかに後方に向かって落ちて行く「猫背」のラインからリフトの発生を想起する向きもあるでしょう。
 実際4輪の世界でもその猫背を嫌って、長ーく後方へ引っ張った・・・
917.jpg
 ロングテール
 あるいはほぼ同様の効果、とされるそれをスパッと垂直に断ち切った・・・
tz.png
コーダ・トロンカ
 は’70年代には現れていて、なおかつそれが正解とされていました。
 当然2輪でそれを取り入れる動きがないはずもなく、進歩的ライダー・・・
片山敬済
kata.jpg 
(これはRG500での例)
 は排気チャンバーの「逃げ」等で凸凹のあるテールカウル全体を、いかにも手造り風な(笑)アルミ板で被った巨大なコーダトロンカ・カウルを試していました。実戦投入もしていたので一定の効果は認められたのでしょう。
 ちなみに上記F1パンタのテールカウルはこの流れ、ですね。

 以上のように優れた空力性能が証明されている、この片山Spl.やチェスターフィールド車等のテールカウルですがそれに比べ現在のマシン、例えばこれは・・・
ホルヘのチャンピオンマシン(前回のw)
ホルヘ 
(パンタと同じスクリーン形状にも注目!)
 ですが、その後端部はずっと小振りになっています。
 なぜでしょうか?
 その理由は、大きなテールカウルの優れた空力特性が・・・

 後続車をも利してしまう(?)

 ようなのです。例えば最終ラップの最終コーナー立ち上がりメインストレート、ぴったり張りついた後続車。フィニッシュラインまでにその後続車にスリップストリームが効いてしまい・・・
 オーバーテイクされやすくなってしまう(!)のです。単独で走らせる実験とは違う(=闘う相手のいる)実戦の世界の厳しさを物語ります。

 しかし、抜きつ抜かれつのないストリートではそんな配慮は無用です。近年
「優れた空力性能こそ正義」
と言わんばかりに・・・
busa.jpg
(Busa!)
 大きな猫背ヒップ ♡ を見せつける超高性能市販車が数多く走っています。

 自転車レースにおける TT
(泣顔でもツーリストトロフィーでもなくタイムトライアルw)
 で使われる、ライダーの背中に伸びた・・・
aerohel.jpg
エアロヘルメット
 とよく似たライディングスーツの背中のコブ
aeroback.jpg 
(キャメル・バック?)
 商品化されたのは’90年代だったでしょうか。
 これも’80年代に入る頃には片山選手らが、当初はスーツの背中に「枕」を押し込んだ(笑)ようなものでしたが(本稿前述のギロチン対策、だったのでしょうか?)テストしていました。
 今では飲料水タンクや転倒時のエアバッグを仕込む等、進化しています。
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  1. 2016/05/04(水) 17:01:29|
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