Casting:鋳造の話その2・砂落ち

mag - コピー (4)_1
(3S-Gのカバー・シリンダ・ヘッド←部品図名称w)


 鋳物の話、続けます。

 トップ画像のマグネシウム(以降元素記号Mg.で表記w)ヘッドカバー。この鋳物は素材段階で樹脂含浸
(窯内で減圧。次に熱硬化性?樹脂に浸し加圧、を繰り返し内部の巣を樹脂で孔封し、漏れ止め)
 済み、勿論熱処理(靭性を与える。T6だったかと)済み、鋳型の組み合わせ不良
(端組み、はぐみと言います)
 もなく寸法精度も問題なし。機械加工も済んで
(端組みがあるとバリが出たりした分寸法が変わり、加工部分が鋳物に対してずれたりする)
 機械部品、機能部品として機能上、何の問題もない良品なのですが
「商品」としてNG品、なのです。
 一体どこが?

 TOYOTAのAが潰れているのが判りますか?

 これが「砂落ち」です。

 この場合砂型のAの内側の△の出っ張り
(鋳物が凹状の場合鋳型は凸状になる)
 が何かの弾みで(?)ポロっと取れてしまった(!)のです。職人が型を組む際それに気付けば取れた部分を糊付けして補修するところですが、わからなかったようです。
 レース用の、高価な、Mg.製の特別なヘッドカバー、それもあの神経質な(笑)トヨタの「商品」です。これは納品できません。あるいは厳しい検品に引っかかったのかもしれませんが(笑)
 と、Mg.鋳造とはかように「歩留まりが悪い」
(納品数に対し多く吹かねばならない=不良品発生率が高い)
 いかにもmanufactureな仕事なのでした。

 以上キャッチーな例として挙げましたが本来の「砂落ち」とは・・・
 ポロっとではなくパラパラっと(笑)
 なのです。

 砂型の主要部分が欠けるより、例えば職人の手が触れた等で、型の表面の砂がほんの少し削れ落ちることの方がはるかに多いのです。そしてその砂粒は下型の凹部分すなわち製品部分に溜まります。
 これが「砂落ち」です。
 型を並べた段階であればその砂粒をエアで吹き飛ばせば
(実際にはカタカナの「イ」の形に繋いだ断面積の異なるパイプとエアガンで吸い出す)
 問題ないのですが、型を組む時パラパラっとなるのは残念ながら防げないのです。
 するとどうなるか?

 砂粒の分、鋳型は膨らむのですから鋳物は凹む方向、すなわち製品に(貫通しないまでも)穴が開く、のです。
先頃アップした、モントーヤを支えた・・・
indy.jpg
プレナムチャンバーアッパー
 砂落ち
 その裏側は、ご覧の通りのリブ形状・・・ 
 このリブの峰、上部の穴(欠け)これが「砂落ち」です。いかにもポロっと、感じがしませんか?

 前稿と前後しますが・・・
 このチャンバーアッパー、複雑なリブ形状があるため裏面が下型の珍しい例です。
(上がりは中心のボスに。平たい形状ゆえ問題は少なかった)
 鋳物のリブの峰の頂点は下型凹部の底面、になります(解りますよね?)。

 そして同じく前稿のモーターサイクルのジェネレーター・カバー・・・
mag_1.jpg
表面に凸状の刻印があります。 
 これに砂落ちが起きると・・・
 下型にある刻印が埋まり、文字が消えたり本来フラットな部分に凹ができたり(=凸が少なくなったり)するのです。

 以上のように「砂落ち」は鋳造屋が避けねばならない代表的なケアレスミスのひとつなのです。



 さて「砂落ち」に似たワードに「砂落とし」があります。

 鋳造(冶金=やきん、とも言います)の世界では・・・
 冷えて固まった(といってもまだチンチン!に熱い場合が多いw)鋳物を砂型から掘り出し(笑)ブラシや振動機
(道路工事的器具でw同様かそれ以上の騒音を発します!)
 をかけワークを砂の付いていない綺麗な状態にする事、です。

 しかしエンジン・チューニングの世界では古くから
「鋳物のザラつきを滑らかにする」
意味で使われているようです。

 50年前の、鋳鉄製エンジンの時代なら・・・

 鋳物屋の仕事が粗く、ワークに砂が付着したまま、なんてことが恐らくあったでしょう。結構強固にこびりついているとはいえ何時剥がれるかは判らないそれら砂粒。剥がれればエンジンへ悪さするのは必然です。
 それを未然に防ごう、といわば「精密組み立て」の概念からはじまったのが「砂落とし」なのだろうと自分は考えます。

 現在、自身のXJ900のエンジンを超精密組み立て中(笑)私の機械いじりの「心の師匠」吉村誠也氏もクランクケース内面に
「ザラつきがあれば全てサンドペーパーをかけた・・・」
そうです。
 しかし技術的には砂の付着は既に払拭されているはずなのに?
 ましてや「砂落ち」なら凹ゆえ指先には感じ難いはず、なのに??
 なぜ、凸のザラつきが??

 やはり「砂落ち」なのでしょう。
 上型(うわがた、です)と下型内面(側面)からの微小な砂落ち。その砂粒が落ちた跡(鋳型の凹)が鋳物の微小な突起になるのです。
 件のプレナムチャンバー、裏面を見ると確かに凸凹があります。
砂落とし 
(赤が砂落ち、黄色が出っ張り)
 そしてその微小砂落ち以外にもうひとつ、型を抜く(木型を砂型から離す)際、木型表面にくっついた砂が引っ張られ出っ張ることもあるのです。一番上の黄色はそれくさいです(笑)木型に砂を詰める前に「離形剤」を塗布しますが、その塗りムラ等で発生します。

 以上のように、エンジンチューニングにおける「砂落とし」はもはや必要ないでしょう。というよりそのワードが実情に合わなくなった、というべきかもしれません。吉村師匠のように、指先に感じるザラつきを滑らかにするのが正解です。これを「砂落とし」というのはちょっと・・・。
 DIY(?)エンジン組み立てで
「ようし昔ながらの砂落としだあ!」
とエンジン内面にやたらリューターを当てるのは、過ぎたるはなんとやら(笑)今となっては過度の「ポート研磨」と同様慎むべき
「心情的チューニング」
なのではないでしょうか(笑)

 長くなりました。今週はここまで<(_ _)>

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  1. 2016/07/31(日) 17:59:30|
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