Casting:XRE 0=GSV-R@MotoGP


(クランク室中心直下の穴に注目・・・)

 国内にマグネシウム鋳造屋は数える程しかないことは以前書いた通り。ということは国内各メーカーが手配するマグ製ワークスパーツに「当たる」可能性も高くなるのです。

 2001年のある日、機械加工等部品製作の「手配屋」さん(←そういう人がいる)が新規製作部品の見積もりで図面が持ってきました。
 よく見ると・・・
 背の低い円筒が5つちょうどオリンピックのマークのように連なった形状の部品でした。
「これは・・・?!

時は翌年に新カテゴリーMotoGPの開幕を控えた頃。そこで走らせるマシンの情報も関連誌上を少しづつ賑わしはじめていました。そして伝え聞くホンダのニューマシンは、独創的なV5気筒(!)であることも。その図面のメーカー名等は伏せられていましたが

「これは、ホンダの5気筒に違いない!」

そう確信した自分は工場長に進言しました。

「これはホンダの新しいグランプリマシンの部品です。作れること自体が名誉だと思います。ぜひ受注すべき、です!」

『なるほど、君がそこまで言うならそうなんだろう。この鋳物は・・・特に吹き難いこともなさそうだし、出す見積もり(=金額)ちょっと頑張ってみようか!』

残念ながらそのホンダRC211V(因みにVは5の意、だそうな)の吸気系パーツ鋳造の「入札」は通らず、受注できませんでしたが・・・


 一流の会社には一流の仕事が来る



 を実感したエピソードでした。


 一方旧来というか当時現役のGP500の方では・・・

rgv.jpg

スズキのRGVガンマ


 のクランクケース・アッパーやクラッチ側カバー、排気デバイスのカバー等は我社の製品でした。そのプロトタイプの(スクエア4からV4になった)頃から受注していて・・・

 その縁で、開幕翌年から参戦を発表したスズキのMotoGPマシン

GSV-R

(この本で今稿、書く気になりました・・・)


 のエンジン部品製作にも関わることになったのです。

 GPマシンのクランクケースは整備性への配慮から、すべからく上下割りです。VΓの時はそのアッパーを吹いていました。そして今回・・・

GSV-R 形式名 XRE 0(ゼロ)

gsvr.jpg 

(非常にコンパクトなエンジン)


 ではクランクケース・ロワを手掛けることになりました。アッパーはスズキ内製もしくは他社(神戸製鋼かどこかw)で吹くはず。そう、組み合わせる部品(この場合はアッパーとロワ)双方を同じ工場に発注することは、ことレースの世界では稀なのです。
 
 工場とは言いつつ少量生産の場合全ての作業は職人の手間。手作りみたいなものです。となれば2つの仕事を同時に進めるのは無理があり、多かれ少なかれ複数の部品製作には納品タイムラグが生じます。ということは・・・


 相方が揃わず組みつけられない


 という状態が発生するという可能性が高く・・・そのリスクヘッジのため別の工場に手配するのです。スピードが命のモータースポーツの世界ならではの話ではあります。

 そのXRE0のクランクケース・ロア、その色から一目で判るようにマグネシウム製。開発を早めるためそれまでのRGVΓの車体に載るよう非常にコンパクト、幅の狭さは驚異的です。VΓのエンジンがパワーを求め掃気ポートの断面積を大きく取り、500ccとしては幅広く見えたのと対照的です。

画像左というか上(合面)側がクランク室・・・

xre0.jpg

右下がミッションです。

ひっくり返してオイルパン取り付け面側。
xre.jpg
 内側の正方形の穴2つがトップ画像の窪みと繋がっています。

 と、結構複雑な形状の鋳物ですがご理解頂けたでしょうか(笑)
 しかし、このXRE0最初のプロトタイプは「短命」でした。
 極く少数の第一ロットを納めると間もなく新しい図面が届いたのです。設変です。最初の仕様はベンチで回しただけで「使い物にならない」ことが判明したのでしょう。RACERSにもそういった記述が。

 実際にはどんな問題があったのでしょうか?

 超高回転での振動等に問題があったのか、クランクシャフト支持剛性不足だったのか、全体の剛性を上げるためでしょう、重量増には目をつぶり材質がアルミに変更されたのです。
 また、クランク室内の残留オイルとクランクウェブの干渉もあったのかもしれません。
 例の正方形の2つの穴ではオイルスカベンジング能力不足もあったのでしょう。そのためのオイルポンプ追加はナンセンスです。というわけで、クランク室とミッション系を仕切る半円筒状の壁がそっくり撤去され、そこに剛性確保のため「素通しの井桁」状のごついリブが与えられました。この改変によってクランクケース内部形状はちょっと見「換気扇フィルター」のようになりました。
 現代のエンジンではオイル回収等のフリクションロス低減は重要で、前述の新しいホンダの5気筒でも「セミ・ドライサンプ」なる新機軸(不勉強で未確認w)が導入されているそうです。

 その第2仕様は画像がなく、文面での解説となりましたが、ご理解頂けたでしょうか?

 この稿、続きます。
 
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  1. 2016/08/29(月) 12:13:32|
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