Miss cast?:Yamaha YZR-M1クランク・ケース

gsvraf.jpg  rc211v.jpg 
(スズキ ↑ とホンダ ↗ のインジェクション部分・・・)

 クランクケースの話が続きます。

 ヤマハの依頼で250ccでしょう、2気筒のクランクケースを作ったことがあります。

 本社直属の、といわばワークス・マシンではありましたが純ワークスたるYZRは存在しなかったのでサテライトというかセミ・ワークス格のTZM(=改造TZ?)だったのでしょう、材質もアルミでした。
 またこの時は木型支給、すなわち既にどこかで吹いたものを
「そちらで再度(=不足分を?)吹いてくれ」
ということでもありました。
 ところがこの木型、法案が良くなかったのか(?)思いほか難物で、歩留まりが非常に悪く・・・鋳物上面に鋳造不良が出てしまうのです。

 会社では、クランクケース等込み入った機械加工を施す
(すなわち加工費が張る)鋳物には吹き終わった直後に全数、いわゆる
 レッドチェック(浸透探傷検査)
 を行っていました。費用をかけてオシャカにする訳にはいきません。加工費に比べればカラーチェック・スプレーや鋳物本体すらも安いもの(笑)その検査で鋳物上面が「真っ赤」になってしまう・‥
 いわゆる「焼け」でした。
 上がりの効きが悪かったのか複雑な形状に対し吹く方向が間違っていたのか、鋳物が冷えて凝固する際「湯を取り合って」しまうことに起因する「巣」とは異なるスポンジ状の、組織の粗い部分ができてしまうのでした。
 その部分は本来の強度が出ておらず(=脆く)もちろん機械加工部分に当たると使い物になりません。
 そして色々手は打ったのですが残念ながら手詰まり、根本的には解決できませんでした。
 最後の手段として鋳物屋としては恥ずかしいことですが、怪しい部分をリューターで掘り込んでの溶接肉盛り(→元通りの形状に切削)補修を行い納めたのでした。

 その作業は全て自分が担当しました。かなり大掛かりに「施術」しましたが、やはり取り去り切れなかった「粗」な部分はあったかもしれません。ヤマハの切削担当者氏に不愉快な思いをさせてしまったかも・・・?
 恐らくはヤマハでも
「このクランクケースには鋳造不良部分が多く出る」
ことは認識していたと思います。だからこそウチにお鉢が回ってきたのでしょう。
 そして来るべき新設計のクランクケースの出来に、そんな不安定さが付きまとうのは何としても避けねばならない、と設計陣は考えたはずです。

 時は新カテゴリー施行直前でした。
 そしてその、MotoGP用YZR-M1エンジンの開発に当たってヤマハの出した解決策は・・・
billet.jpg 
(輝く、エンドミル切削加工跡だらけ・・・)
 総加工(=削り出し)クランクケースの導入、でした。

 製品の安定性を求め、マグネシウムの使用による僅かな軽量化には目を瞑り、巨大なアルミ・ブロックから本体を機械加工オンリーで削り出すのです。
 エンドミルのひと削り(=一往復)1mm以下の削り代を積み重ね(!)肉の薄い複雑な形状の「箱」を形作るのです。加工時間は驚くべき長時間(恐らく一昼夜?)に上り、その総加工費も相当な額となるはずです。
 しかし一方製品の安定性、設変に対する機動性、剛性等々確かに多大なメリットもあり・・・

 以来ヤマハからクランクケースの鋳造依頼はありません。


 トップ画像はGSV-RとRC211Vのインテーク部分です。

 4発のスズキのそれが菱形配置の4穴なのに対し5気筒のホンダ。8/29稿 冒頭で触れている「オリンピック・マーク」、縦になってますが(笑)お判り頂けるでしょうか?
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  1. 2016/09/18(日) 14:39:21|
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