5-1) ホイールアーチの話:日本車スタイリング現代史

  
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 自転車の操縦性についての話、それなりに反響があったようです。思えば自転車のハンドリングのセットアップ、操縦性の「改造」なんて記事はよそでお目にかかったことありません(概念すらない?)。そいつを続けようと「打ち込んで」おりましたが、掘り下げ過ぎてしまい、どうにも収拾が着かなくなってしまいました。顔を洗って出直してきます<(_ _)>

 それでは趣向を変えて、自動車スタイリングの話題を軽く。

 ホイールアーチ・・・???前々稿のシャマルやランボルギーニ・カウンタック
しゃまる  くんたっち
(両車の、後輪側に注目)
両車のリアでお馴染みの「ガンディー二・カット」はご存知でしょう。それらは極端な例としても、タイア周りのボディ開口部である

 ホイールアーチその形、切り方について 四方山話を。

 その開口部形状は通常、真円ではないものの丸く、ホイール中心とほぼ同心円を成します。上下方向はそれこそ「車高」で変わってきますが前後方向の中心は揃っているはずです。
 そうなっていないのは事故車くらいでしょう(笑) 極く稀にカロッツェリアによる手叩きボディでも見かけることもあります。

 ホイールアーチ即ちフェンダーの機能の基本はスプラッシュ・ガード
(=泥よけ)です。その効率を考えればホイールアーチ外周を繋いだ「面」は垂直になります。
 すると前後ホイールアーチとその間(ドア部分)にはかなり広い垂直な平面が現れることになります。
ha.png  
(デザイン不在!の同心円の反復と平坦さ・・・最新なのに・・・)
 そう、日本車の前後ホイールアーチのほとんどは、ひとつの面に収斂するのです。
 これが80年代日本車のスタイリングをのっぺりさせた最大の理由、スタイリングを軽視、フェンダーの効率を優先させた結果です。
y30.png
(とはいうもののY30は日本車の、ひとつの到達点ではあります・・・)
 その垂直に切り立ったホイールアーチ面と、それにつられて平板になってしまったとはいえ(断面で見ると)上下部分にはRがあるボディ側面(=ドア面)。加えて「5ナンバー枠」という別の呪縛もあり

 僅かなフェンダーフレアをやりくりしてその2つの面に整合性を持たせる

 これが永く日本車のスタイリング命題のひとつでした。
 日本車の、その切り立った扁平な側面形状が打破されるのはこのクルマの登場まで待たねばなりません。
s13x.png
この13x系クラウン(それも4dr.HTのみ!)は、ただ

 ふくよかなスタイリング

 のためだけに、室内は全く変えずボディを拡幅、いわばドアだけ厚くした、画期的な日本車でした。

 一方そんないわば「呪縛」のない欧州車には

 ボディ断面形状に呼応した「いびつなホイールアーチ」

 の例はたくさんあります。
 そうした
 ホイールアーチよりボディ側面断面形状が「勝った」日本車最初の例が
p.png
日産プレセアです。
p2.png
(バンパーとサイドモールの存在感で欧州車っぽい雰囲気が・・・)
そうではなくて、ワンダーシビック
25.png
(このクルマ、ピニンファリーナによるもの!なので日本車じゃない・・・)
とかGC10スカイライン
gc10.png
(サーフィンラインはギミック、しかもリアだけなので・・・)
との異論もありましょうが、
 明確な意志を持って前後・・・はプレセアではないかと。

 プレセアのフェンダー形状、そんなたいそうな意識をもって生み出された
ものではもちろんなく (なぜなら2代目では止めてしまいました)、それは

メルセデス・コンプレックス

から生まれた、と自分は考えます。当時最良のクルマのひとつだった
Sクラス、W126。
w126.png
 プレセア担当主査もしくはスタイリスト氏のコンプレックス
 というよりトリビュート、なのでしょう、
1262.png  p2.png
似てる、と思いませんか?

 日本車の成り立ちは全体からディテールまで永く、

 作る側の「こうしたい」という主張ある、提案型ではなく
 「どうあるべきか」という、いわば哲学的アプローチ(笑)から生まれるもの

 でした。それゆえフェンダーひとつとっても機能の定義づけが必要で、なおかつそれが一旦決まると自らそれに縛られてしまう、といった硬直性もありました。
 ボディ側面が扁平に切り立ってしまったのは正にその著例と思います。

 それに比べらればイタリア車のスタイリングは正に提案型、デザイナー/スタイリストの意図は明確でそれは、
 美しさ、格好良さ、あるべき所にあるべきものがある、という「必然性」
 といったところでしょうか。
 

 では、われらがジウジアーロ御大の初期の代表作、アルファロメオ・ジュリア・スプリントGTクーペ
gtj.png
を例にホイールアーチを論じてみましょう。

 このクルマ、御大がよく使う「目を引く」ディテール、ギミックの類がないことから、御大はその全体としての形を訴えたかったものと思います。

 軽快なクーペでありながらぎりぎり4シーターのルーミーさをも盛り込んだ

 云わんとするのはそんなところでしょう。その軽快さを現すためボディ
側面、前後の絞り込みは非常に強く

 (そうすると顔とお尻が相対的に小さくなってスポーティに見える)

 平面図(=上面視)で見るとボディ側面は大きなRを描きます。
gtjr無題
 直線(=平面)部分はありません。
 そして御大にはフェンダーの泥よけ機能を重視する意図は皆無。
 するとホイールアーチはそのボディサイドの大きなR面に切られることになります。

 かくして車体中心線に対し平行ではなく
 放射状(上面視で斜め)に配置された前後ホイールアーチが出現します。
gtj無題
 この「斜め」のホイールアーチに当然真っ直ぐ(=車体に平行)のタイアをはめるとどうなるか?

 ドア側のホイールアーチにはかろうじて収まるものの、前後方向にタイアははみ出します。
1750.png
(タイアは奥まっているにもかかわらず、見えてます)
 さほど太いタイアを履かずともトレッドが見えてしまう、この

 はみ出しっぷり

 が格好良いのです。

 四肢を踏ん張った野獣の如く身構えるクーペ。
 この状態にハンドル切れ角、あるいは走行時のロールが加わり変化するそのはみ出し加減。
 そこにえも云えぬ動感、スポーツカーらしい躍動感が生じるのです。


 そして日本車でボディサイドの大きなRを優先したため「斜めの」ホイールアーチを持つに至った最初の例が
NA.png  
ユーノス・ロードスターNAなのです。

 オーナーのみが知る、ハンドルを切って停めたときの格好良さ。
 それは歴代アルファ・オーナーが味わってきたものと全く同じものなのです。

 トップ画像は以前自分達が共同所有(稼働率の少ないスポーツカーの
共同所有は「あり」だと思います)していたアルファ1750GTV。
 外側のランプを大径のマーシャル・タイプ178
178.png
に交換、「フルヴィア顔」にして乗ってました。

 御大も喜ぶ格好良さではなかったか、と思っています(笑)


とまあ、書き綴って参りましたがボディ一体バンパーが主流となった現在ではあまり意味のない「研究」ではあります(笑)
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  1. 2013/05/18(土) 21:48:57|
  2. Styling
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

こんばんわ。

ハコスカの斜め後ろからのアングルは日本車には見えませんね。
  1. 2013/05/26(日) 00:53:15 |
  2. URL |
  3. オッサンA #-
  4. [ 編集 ]

Re: こんばんわ。

オッサンA さま

コメントありがとうございます!

この車両はバンパーを外しているのでよけい、そう見えるかも。

今稿のようなことを書いて反響があるとは・・・!嬉しいです(*^_^*)
  1. 2013/05/26(日) 09:37:39 |
  2. URL |
  3. 十字野郎 #-
  4. [ 編集 ]

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