2-13)F1 Guitar

 
(箱根マツダコレクションのショーケース内)
 バンドの友人、ギタリストKが音楽専門学校ESPのギタークラフトマン課を終了してしばらくたった頃、自分のところに突然裸の(=塗装を剥がした)
ギターボディ

(ランダムスター)
を持ってきて曰わく
「このボディが1個余ってる。なんでもいいから描くなり彫るなりしろ」

 奴は鼻がスイッチになっているミッキーマウス型ギター
mm_20131027095335fad.png
とかを自分の楽しみのためだけに作るような男です。似たようなことを自分にもやれ、好きだろ?ということなのでした。ある意味、自分を芸術家
(! 愛好家か)と見込んでのことです。
「ようし!やってやろうじゃないの、目にもの見せてやる」(!?)
とそこに意気込んだ自分がおりました。

 そのボディは安物で(笑)しかも継いであり、木目を見せるクリア仕上げは論外、描くといってもスペースはハガキ程度です。うう~んん、と考え込みながら全体を眺めていると・・・閃きました。
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F1カーのサイドビュー
 に見えます!真下に突き出している部分はどうする?(自問です)
 そりゃあ・・・馬のマークにするしかないでしょ!(自答です)
 かくしてフェラーリF1をかたどったギターボディの制作が始まったのです。折しもJ・バーナードによる
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美しくも画期的なマシンと速いが止まるマンセルの
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「破滅的」激走
 に心酔していた自分にとって、制作意欲を喚起するに充分な題材といえました。そうと決まればボディをKに送り返し、オリジナルシェイプからほんの少しだけ欠けているインダクションポッドの先端部分および後輪に相当する「突起」の追加(=木片の接着)
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(この部分がちょっと足りなかった)
 と馬のマーク部分の整形(=片側を切削、左右対象に)をやらせました。やな顔一切なし、のKの対応には彼の期待を感じました。
 当初はレリーフ(浮き彫り)として制作していましたが、彫り進んでゆくとボディに充分な厚みがあるため、フォーミュラの細いモノコックならば3次元的表現が可能と判断、途中から一段とリアリティが増しました。
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当然サスアームはなく前輪はノーズに半分食い込んではいましたが、オブジェとしての存在感、リアリティは飛躍的に向上しました。途中ギターとして機能させるためピックアップ部分への加工が必要になった際、Kの都合が悪く彼のギター制作の師匠でもあるベーシスト、H先生(4-0) Giacca di cuoio稿参照)にやってもらうことになり、喫茶店で待ち合わせです。それまでは
「あいつの頼みだからしょうがねえなあ・・・・」
といった今一乗り気でない雰囲気でしたが(笑)ランダムスター用ケースから本体を取り出して見せると・・・
「おっ!?」
と顔色が変わるレベルで態度は一変!がぜん前のめりで、素早く対応して貰いました。訊けば
「・・・生徒たちよりずっと上・・・」
とのお誉めの言葉、
「俺の教えてることなんてできるやつは最初からできる」
とも。以来先生は自分のことを認めてくれています。
 制作中、失策があった場合は当然としても、こうした方が絶対いい(=完成度が上がる)と判った時点で、それまでの作業を半ば打ち消すように、改めてやり直すことがあります。その時の気分について、プロのギター制作者でもある先生との会話・・・
「もう、面倒くさくて・・・嫌で嫌でしょうがないんだけれど・・・」
「そういう時、往々にしてあるんだよねえ」
「気を取り直して、やるしかないと・・・」
「そりゃあ、なんちゅうか・・・『宇宙の意思』だから・・・」(!)
このフレーズが大受けで、以来我々の間だけですが通用してます(笑)
 実はこのころ、まだ

彫刻機
は持っていませんでした。
 完全手彫り?そんなことはなくて(笑)サイドポンツーンとコクピットとの段差は焦げるのを承知でディスクサンダーを、とか前輪とウィングの間はドリルを、といった具合に木工にあるまじき荒技も使いました。また、馬のマークのベース(楯形状部分)には機械的平面が必要ゆえKにルーターで、馬のアウトラインを残しエンドミル加工してもらいました。タイアは真円加工は無理なのでホイールの意匠を省略し、滑かな凹面としてリアリティとデフォルメのバランスを取ったつもりです。Fウィングはそれっぽく見えるという理由で翼端板の大きいハイダウンフォース仕様、モナコ風に。ノーズは制作に入った当初'89年のオリジナルが
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「カモノハシ」風
なのに対し翌年以降は丸みが増します。
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後期型にしました。
 そう、このギター、結構な大作ゆえのプレッシャーもあり途中で、特に仕上がりを左右する塗装が嫌になったりして(笑)休工期間があり、完成まで実に足かけ2年かかったのでした。

 さて問題の塗装です。基本的には普通のギターと同じ、ということは車と同じなのですが、顔を近づけて見る機会が多いので通常ゆず肌なしの鏡面仕上げ、入念な磨きは欠かせません。前述の通り木目は塗りつぶしですが
「ここは削り過ぎた、こっちはもう少し盛ろう」
といった修正のためのパテ(これも車と同じポリパテ)も入っているので下地の調整も必要でした。
 プラサフそして黒、発色のための白、黄、赤と塗り重ねていきます。自動車用スプレーペイントです。
 自分、缶スプレーテクニックにはちと自信があります。最も美しいとされる
「垂れ落ちる寸前の塗膜」
を随意に作り出せる、ということです。その査証というかそれを誇示すべく敢えてですがこのギターのヘッド面、吹きっぱなし(!)です、磨きは入れてません・・・
 と、塗り上がったところを眺めると一つ気になる所が・・・赤黄黒、なにやらドイツ風に見えます。
「イタリアの至宝フェラーリがドイツ野郎風に見えるなんて、許せん!」
せっかく塗り上がっているのに、ネック基部だけですが白としました。フェラーリとドイツ・・・シューマッハーはまだ現れていなかったんですねえ(笑)
 以上でペイントは終了。続いてデカールです。
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タミヤの1/12キット
のものを流用します。もちろんマンセル仕様に。今は亡き恵比寿はミスタークラフトにて簡単に入手。なんと常設されてました。本体はおよそ1/9スケールくらいだったのでさほど違和感なくまとまり・・・というよりバッチリ決まりました!何といっても縮尺違いとはいえ専用品です。加えて前後翼端板にはカーボン地デカールでディテールアップ。タイアは径が違うので G O O D Y E A R と一文字づつ切り貼りしました。あとはクリアをかけ、デカール段差がなくなるまで磨いておしまい!です。
 完成後、ショーギターではないのだ!とばかりに
f1g2
実際にライブに使ったりしました。
 残るは・・・ドライバーのサインが入り画竜点睛!のはずだったのですが・・・完成後しばらくした'91年シーズン、当のマンセルはウィリアムズに移籍してしまったのです。

 制作期間同様(笑)長くなったので、今稿はこれにて。以下次週。
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  1. 2013/10/27(日) 09:34:58|
  2. Illustration&Work
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