マグネシウムの話:その2

 
(サスのない時代のアラヤ、Mg鋳造MTBフレーム!思わず買いそうに・・・)
 マグネシウムの話の続き、その「展性」について・・・

 マグネシウムは曲がりません。
 棒状なり板材なり、物が曲がる、ということはそのアール部分の
「外側が延びる」
ことを意味します。ところがマグネシウムはほとんど延びない
(=展性に乏しい)ので、延びきれず割れてしまうのです。その軽さ、感触、音そして割れっ振りから
「マグネシウムは瀬戸物みたいなもの・・・」
という文章を読んだことがあります。
 確かにお茶碗は曲がりませんよね?元プロとしては素直には承伏しがたいものがあるのですが、まあ言い得て妙かなと(笑)
 実際、破断したマグネシウム鋳物、その破断面を見ると陶器のようにも見える粒状結晶が確認できます。

 ところで、この「破断」とマグネシウムに付き物の「腐食」とは直接の関係は実はありません。いかに酸化しやすいマグネシウムと言えどその鋳物が健全ならば、たとえ海辺に放置したとしても腐食が元で破断に至るには何年もかかります。
したり顔で・・・
col.png
「このマグホイル腐ってっから割れるよ」
 などということはないのです。
 自分は割れたマグネシウムホイールを見たことはありません。設計強度不足なのかレース中、ホイールのスポーク部分が折れた(!)Cカーは見たことがありますが。聞いた話では昔、イタリアンバイクDに標準装備だった某マグホイールが
「必ず割れる」 (PHMCN氏談)
そうな。そのホイール、コスト的に鍛造はあり得ないので鋳造品であることは確実。それがマグネシウムかどうか未確認ですが(たとえアルミとしても)その理由を考察してみると・・・
 その鋳物(ワークといいます)はバンクしてコーナリングするバイクのホイールゆえサイドフォースはかからず、荷重は全て縦方向です。カーボンと違いマグネシウムは座屈では壊れ難く、となるとその破断の力学的要因は
 制動と加速の捻りストレス
 ということになります。それは駆動力とタイアのグリップ反力に起因するものですから、破断はスポーク部ではなくホイールハブ近くで起きるはずです。量産車ということでその破断は結構頻繁に起こっているはずですが死傷事故、リコール等の問題は起きていないようです。その理由は恐らく、割れるであろうホイールハブ部には強靭なブレーキディスクあるいはドリブンスプロケットが締結されておりそれが命綱として機能していた、ということなのでしょう。しかしいくらマグネシウムが延びないとしても、その曲げ限界まで当該部分が歪むというのは考えられません。ゆえにその原因はマグネシウムの展性に起因するものではないと思われます。ではその原因とは?
 考えられるのが鋳物自体の不良です。

 ここでマグネシウムの展性からは脱線しますが、鋳造について少し。

 上記バイクホイールの破断は製品すべからく、のようなので不純物等「湯」の問題ではなく鋳造上の問題でしょう。
 「鋳造法案」が適切でなかった、ということです。

 一般的に鋳物にはその上部に「あがり」と呼ばれる、製品にする際には切り取ってしまう「突起」が必要です。
 鋳物は注湯後徐々に冷え、体積を減らしながら凝固してゆきます。その冷却収縮の際、流動性のある(=熱い)湯をその体積減少分供給し続けながら徐々に凝固させなければなりません。さもないと鋳物に「巣」ができる、というかスポンジ状に密度の低い(=弱い)部分ができてしまうのです。その、凝固時の「熱い」湯の供給源として最後の最後に固まる「湯だまり」が
「あがり」なのです。
 また、その「あがり」のワークの「密度を高める」効果を含め(上からの)
「押し湯」という言い方をする場合もあります。

 溶湯を直接、型に注ぎ込むことはありません。場合によってはそのルート(湯道とか堰といいます)を遠回りさせたりもします。
 「鋳造法案」とは湯の流れの上で概念として、

 「あがり」の「一番遠くから」徐々に冷えて(=固まって)ゆくように

・・・例えば「あがり」の周囲に保温材を埋め込む、あるいは上記「湯道」の設定といった・・・鋳型に加える種々の調整のことです。
 上記ホイール破断の原因はこの鋳造法案の間違い、の可能性は大いにあると思います。増してやハブ部分、スポーク基部であれば肉厚の変化が著しい部分です。凝固の際、薄い(=放熱の良い)部分から固まってしまい肉厚のある部分の「湯を取り合って」しまうのです。 結果としてできてしまう密度が低く、強度も劣る「鋳造不良」部分を「いつまでも冷えず熱いまま」という意味で「焼け」と言ったりします。
「押し湯が効いていない」
 という言い方をする場合もあります。実際マグネシウムは軽量ゆえ押し湯の効きが悪く、そのためマグネシウム鋳物はワークより、後で切除してしまう「あがり」の方がずっと大きい、鋳造法案設定となります。

と、まだ「展性」まで行けてませんが・・・(笑)今稿はここまで。

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  1. 2014/02/15(土) 18:06:10|
  2. Magnesium&Race
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