オイルパンの話:モーターサイクル

 
(これは集合管で有名なYの製品、アルミ製)
 4輪に比べ、より3次元的な運動(=バンク)をする2輪車。
 それゆえモーターサイクルの運動性向上には低重心よりマスの集中
(重量物を重心付近に寄せる)が要求されます。
 当然エンジンを低く積む必要はなくエンジン下には大きな空間があるためオイルパンの高さを削る必要もありません。コーナリングにおいても、車体をバンクさせるため横Gはかからず(=縦と前後のみ)それゆえオイルの片寄りもないのでドライサンプの必然性も薄れます。実際飛んだり跳ねたり、
時には逆さまになる
MX.png  
(=油面が安定しない)
オフローダーには標準装備のドライサンプですが
現代のロードバイクでの採用例は少なく、初代CB750がその筆頭でしょう。
750.png
 初代ナナハンはなぜドライサンプになったのでしょう?
 思うに、宗一郎総帥をはじめとする技術陣の「意気込み」がその理由ではなかったか、と感じます。つまりそれが「新時代のスーパーバイク」に相応しい「高級な」技術に他ならなかったから、だったのでしょう。実効があったのももちろんです。それまで
mv4.png
 GPレーサー
 以外に例のない、初の量産空冷4気筒です。当時の2輪車は夏冬で指定オイルが違っていた時代でもあり、潤滑トラブルなどあってはならない!
と、信頼性の保険としての強制潤滑だったのでしょう。
(実効は伴うものの)いわばメカ・アイコンとしての採用は同車ディスクブレーキも同じでしょう。有名な逸話ですがCB750、デビューのショー会場にはドラムブレーキ仕様で持ち込まれたそうな。それを見た宗一郎氏
「あれはどうした?」
その、正に「鶴の一声」で展示車は本来発表の予定のなかったプロトタイプのディスクブレーキ仕様に差し替えられとか。
DB.png  dsk.png
宗一郎氏の短気と、ディスクブレーキの採用理由がメカ・アイコン寄りだったことを窺わせるエピソードではありませんか。

 そしてCBナナハンを取り上げ話題にしない訳にはいかない最初期型、通称「K0」独自の特徴、砂型クランクケース!
 バイク雑誌の「国産車アルバム」の同車解説に
「最初期型のみ一本スロットルワイアと砂型クランクケース・・・ 」
との記述があり以来「手造り」のイメージ先行で「珍重」されるようになった・・・のでしょう。
 生産方法で、砂型で行くか金型を起こすかは単純に生産量によります。
 ホンダはこの新型車がセンセーションを巻き起こすことは確信していたと思いますが、売れる!とまでは確信が持てなかったはずです。それはCB750のクランクケース生産方法に砂型を選択したことで明らかです。そして当初の予想を大きく上回る反響にそれでは生産が追いつかない!これが金型を起こした理由でしょう。
 CBが金型移行以前に複数用意したかどうかは定かではありませんが普通、木型は一組みしか作りません。それゆえ1日の生産量は職人が1日に抜ける(=作れる)砂型の数で決まります。そして生産を急ぐあまり職人が「慌てて」仕事をすると砂型の失敗が増え一段と作業効率が落ちるのです。
 砂を詰め終わった木型の外枠を叩いて型を「緩め」枠を外し、砂型から木型本体を抜く時(息を止めてやるような作業です)ちょっとした引っかかりで例えば、薄いフィンの部分の砂がポロッと欠け落ちてしまう!なんてことが往々にして起こります。
 時間に余裕があればその型は廃棄、作り直しですが急いでいると、欠けた部分を「糊」でくっつけて・・・。一部マニアがありがたがる「手造り」の痕跡とはそんな、砂型職人の失敗の跡だったりするのです。
 上記「緩め」にしても寸法精度は落ちる方向です。正確さ、均一性では金型の圧勝。機械部品としては金型鋳造製の方が明らかに優れています。そう、K0よりK1の方が「正しい」機械なのは確かです。総じて砂型鋳造は手造りゆえその分だけアバウトなものとは言えるでしょう。
 それでも、例えばその鋳肌の風合い(≒サンドブラスト後の肌)
sb_20140413110732a3b.png
(これは金型部品をサンドブラスト加工で砂型風に肌を荒らした例)
といった砂型の魅力も確かにあるのですが。

 さて2輪オイルパンの話に戻しましょう。ロードレース用オイルパンは
 横倒しにしたL字(=Γ)型
 です。深いオイル溜まり部分が片寄っている理由は、エグゾーストです。そうオイルパンが集合管を避けているのです。レーシング・モーターサイクルならではの車体要件、
dm.png
60°にもなんなんとするそのバンク角
 を確保するため車体下方も横幅を詰めなければならず、エキパイ一本でさえ通すところを考えなければならないということなのです。
 そのロードレース用オイルパンの形状(Γ型)は、車体要件なので各社共通です(笑)
 なかにはオイル溜まり(=深い部分)から腰上の「急所」へ直接オイルを圧送するためなのでしょう、垂直方向に「通路」が設けられている場合があります。
 その場合、中子を置いての鋳込みになりますが吹き終わった後、中子を形作っていた鋳砂を取り除かなければなりません。太い針金でつついての原始的(笑)作業です。この時設計者氏に砂型鋳造の知識があれば、その作業性を考慮した通路の取り回しとか、あるいは木型屋さんが超絶アイデアでなんとかしてくれる、なんて場合もありますが、そんなこと全然お構いなし!という設計もあります。
 K社のオイルパンはそんな鋳物でした。

 オイルパン上面(エンジン内部クランク下)に穴を開け通路の砂を掻き取った後、溶接で埋める!

 という、ある意味非常に乱暴な設計でした。当然溶接部分の肉厚が管理できない(!)ことになりますが、
「オイルパンなんてそんなもの、漏れなきゃいい 」
という考え方もある、ということです。
 K社のマシンを駆る我等がヒーローN選手。その勇姿をTV観戦中のことでした。スピードは落ちていないのに(=エンジンパーツ破損ではない?)
盛大に白煙を吹き上げ!リタイアしたことがあります。
「あそこの溶接が剥がれたか?」
・・・真相は闇の中です。

 実は前述Yの人気商品、マグネシウムジェネレータカバーやショップC/Mのマグネシウムスロットルホルダーの生産にも関わってました。
 スロットルホルダーの方は当初木型があったそうですが、自分が関わるようになった時には素材(=ブロック)供給になっていました。
 中繰りの半円形の端面合わせゆえ機械加工が微妙で
(←鋳物に対して加工基準面の取り方によっては咬み合いがズレてしまう)結局全面総加工(=鋳肌部分が残らない)になってしまったからなのだそうです。
スポンサーサイト
  1. 2014/04/13(日) 08:26:46|
  2. Moto
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<Gendermerie | ホーム | オイルパンの話>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://italiancarlover.blog.fc2.com/tb.php/70-19e273e8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)